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コロナ禍前後のテレワークの実像を、少々笑おう

定点観測調査として価値が高まる「テレワーク川柳」にみる

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

理解と実践は劇的に変わった。さてその姿は?

 筆者は5年前、一般社団法人日本テレワーク協会が自主研究(ライフコース多様化とテレワーク部会)として毎年公募・選定している「テレワーク川柳」を採り上げ、笑いの背景にある働き方改革が進まない多面的な理由を探ることを試みた(2017年5月8日「テレワーク川柳に見る、働き方改革の本当の壁」、以下「前稿」)。

 そしてコロナ禍となり、2022年春でまる2年、なかなか社会に受け入れられなかったテレワークという言葉への理解と実践は、劇的に変わった。定着したというだけでなく、導入可能だが不能と信じて疑わない人々の姿(同協会ではこれを“粘土層”“岩盤層”と名付けてきた)、真に導入不能な業務、なども明確になってきた。

素材ID20220221TKNA0026A川崎市産業振興会館にあるテレワークスペース「SAKURA LABO」

 少しだけデータを語ると、2019年度まで10%台で停滞してきた「現在テレワーク実施者」は2020年4月から20%台後半に跳ね上がったが、2020年5月(1回目緊急事態宣言の解除)、11月(第3波到来?)と少々低下、2021年7月(4回目緊急事態宣言、五輪)で再び少し上昇、それでも結局は20%台半ばに定着、という流れで推移している。

 同様の区切りで「企業側のテレワーク実施率」を見ると、企業の大小規模別で差が著しいとはいえ、いずれの企業規模でも2020年4月の緊急事態宣言で実施率2倍に跳ね上がった(例えば従業員10~100人で8%→17%、1万人以上で22%→46%)のち、少々の増減含めて定着したようだ。(出典はいずれもパーソル総合研究所ニュースリリースによる)。

 コロナ禍当初に言われた「コロナ禍から抜けたから、テレワークやーめた」という流れではどうもなさそうで、開けてしまった玉手箱は、元に戻らず新しい働き方を、一気にではなく徐々に作っていくことになりそうだ。少なくとも労務法制の柔軟化や中小企業へのテレワーク導入助成金やノウハウブック・事例集など政策的に打てる手は十分に整っている(前稿でも論じた)が、その政策が認知されていないことのほうが重要課題になっている。そういう点で啓発広報ツールとしての、また定点観測調査としての「テレワーク川柳」の存在価値は高い。

 毎年1~2月頃に発表されるこの「テレワーク川柳」の“くすっと笑い”をいま比較するには、コロナ前最後となった2019年度(令和二年版 入賞・佳作百選)と、直近の2021年度(令和四年版 入賞・佳作百選)の対比がよいだろう。

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