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ロシア不在のスケート世界選手権。彼らを受け入れる日はいつになるのか

再び降りてしまった「見えないカーテン」

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 3月27日、南仏モンペリエで開催されていたフィギュアスケートの2022年世界選手権が無事に終了した。日本は坂本花織と宇野昌磨が金メダルを獲得し、2014年以来8年ぶりに男女シングル優勝を果たした。さらに鍵山優真が2年連続の銀メダル、三浦璃来&木原龍一が日本ペアとして初の銀メダル獲得という素晴らしい結果を出した。

世界選手権で初の金メダルを獲得した宇野昌磨拡大世界選手権で初の金メダルを獲得した宇野昌磨

 この大会は日本のスケート史に残る記念すべき大会であったと同時に、今後のスケート界の歴史にも残る異常な状況下での開催でもあった。

 北京オリンピック終了直後に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵略によって、ISU(国際スケート連盟)はロシアとベラルーシの本大会への参加を禁じることを決定。ベラルーシはともかくも、世界トップレベルのロシアの選手がいない世界選手権は、一体どのようなものなのか、現場に行くまで想像がつかなかった。

 だが終わってみると、報道関係者たちの間からは「やっぱりロシアの選手がいないと物足りない」という声はどこからも聞こえなかった。筆者自身も自分でも不思議なほど、やはりロシアの選手が見たかったという気持ちは湧き上がってこなかった。

 「ロシア人がいないと、空気が違う。この大会全体が平和で、我々みんながスケートのコミュニティの仲間なんだ、という気が自然にするんです」

 ある欧州のコーチが、小声でそう漏らした。正直に言うと、心の中でそれに同意している自分がいた。

 締め出されたロシアの関係者たちは、「ロシア選手のいない世界選手権など、世界選手権ではない」と、怒りの声をあげていた。それでも、もういい、もうたくさんです、と言いたくなるほど、ロシア関連の不快なニュースにほとほと心が疲れていることを実感した。

強豪ロシアの選手が不在のなか開かれたフィギュアスケート世界選手権の各種目の優勝者たち。一番左が男子シングル優勝の宇野昌磨、右から2人目が女子優勝の坂本花織=2022年3月27日、フランスのモンペリエ拡大強豪ロシアの選手が不在のなか開かれたフィギュアスケート世界選手権の各種目の優勝者たち。一番左が男子シングル優勝の宇野昌磨、右から2人目が女子優勝の坂本花織=2022年3月27日、フランスのモンペリエ

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筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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