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「快感・フレーズ」1000万部の漫画家とリーマン6兆円債務清算人はなぜ軽井沢に住むのか?

新條まゆと富川久代が語る軽井沢の光と影と波乱の人生

芳野まい 東京成徳大学経営学部准教授

衝撃的だった夜の暗さと虫

――実際に住むとなると、都会暮らしと違って大変なところもあると思いますが……。

富川 まずびっくりしたのは夜の暗さですね。4月に引っ越してきたのですが、私の6月の誕生日に新しくお友達になった方たちがパーティーを開いてくれたんです。夜11時ぐらいにお開きになり、お友達の車について家まで車を運転して帰る途中、曲がり角で前の車を見失い、遭難しました。

――遭難?

富川 街灯もなく、ほんとうに真っ暗なんですよ。どこにいるか分からなくなり、慌ててナビを入れましたが、知らない道を延々と走らされ、「暗闇で動物に出くわすかもしれないなあ」と考えながら、ハンドルを握りしめていました。神隠しにあうかもって思いました。

 あとはですね。マンションの植栽をしてくれている庭師さんとお喋りをしていたら、急に顔の周りがかゆくなり、家で鏡を見たら、顔が真っ赤。手のひらも真っ赤。焦りました。三連休初日の夕方で病院はやってなくて、こんなことで救急に行っていいか迷っていたら、フェイスブックにアップした顔と手の写真を見たお友達が、薬を持って来てくれました。旦那様がお医者様だったんですね。

 原因は多分、毛虫の抜けた毛です。夜には腫れもひきましたが、こうした自分では初めての体験を投稿すると、「よくあるよ」っていう反応が結構あります。まさに、「田舎あるある」。

拡大富川久代さん=長野県北佐久郡軽井沢町

健康的な暮らしで心身ともに元気

――新條さんはどうですか。虫は平気ですか?

新條 もともと長崎県の田舎の出身で虫は当たり前。むしろ軽井沢はパラダイスでした。ゴキブリはいないし。苦手のクモも九州と比べてちっちゃい。軽井沢で大変なのは、お酒を飲んだら、「代行」を頼まないといけないことかな。

富川 それ、ありますね。東京ではタクシーや地下鉄があるけど、車がないとどこにも行けない軽井沢では、お酒を飲んじゃうと代行を使うしかない。

――代行って、運転手が二人でやってきて、一人が自分の車を運転し、自分はもう一人が運転するタクシーに乗るというシステムですね。結構な出費ですよね。

新條 旧軽井沢のお店から自宅までだと3000円位。けちってもしょうがないんですけど、あと数杯ワインを飲めたなと思って……。なんだか気軽に飲めなくなり、あんまり出かけなくなっちゃいました。

――逆に軽井沢で良かったことは。

新條 健康的な生活になったことですね。家から朝日が見えるんです。それが見たいから早起きになる。空気はおいしいし、野菜も新鮮。朝から野菜スープをつくって食べると元気になります。

 テニスも気軽に行けるのもいいですね。東京でテニスをしようとすると、電車で出かけて、受付をして着替えて、1時間半ぐらいプレーして帰ってくると、ゆうに3、4時間はかかる。ここだとテニスウェアで車に乗ってプレーできて、時間がかからない。

 そんなこんなで、心身ともに健康になりました。実際、軽井沢への移住者に聞くと、持病が治ったって言う人が多いですよ。

拡大新條まゆさん=長野県北佐久郡軽井沢町

移住して一気に友達が増えた

――富川さんはいかがですか。

富川 東京にいるときは、ほんとうに仕事しかしていませんでした。帰宅しても、ロンドンやニューヨークに電話をしたり、電話会議があったり。友人と飲みに行っても、「夜11時から会議だから」と途中で引き揚げる。友人は金融業界の人たちばかりで、遊びといっても、映画や舞台を見にいったり、お買い物をしたりという程度でした。

 そんな生活が軽井沢で劇的に変わりました。若い人、年配の方、いろんな職業の人たちと友達になり、ゴルフに行ったりテニスしたり温泉に行ったりバーベキューしたり。そういうのって私、若い頃、まったくしていなかったことに気が付きました。今では、困ったことがあると、かけつけてくれる友達もたくさんいます。

――移住といっても、新條さんのように仕事はそのまま、住む場所を変えるケースもありますが、富川さんの場合は、金融の仕事を辞め、セレクトショップのオーナーになるという大転身でした。旧軽井沢にお店をもたれていますね。

富川 移住を決めた後、友人に「軽井沢にマンションを買って引っ越すんだ。金融は卒業して、しばらくゆっくりしてから、何がやれるか考えてみる」と言ったら、「よく海外にいっていたし、ブランド品も好きみたいだから、セレクトショップをやってみたら」と言われ、「それもありかな」と無計画に始めたんです。

 スタートして1年でコロナ禍になり、厳しい時期もありましたが、この4月で丸3年。お得意様も増えました。なかでも嬉しかったのは、病気で家に閉じこもっていた70歳を越えたお客様が、私の店に来るのが楽しみになり、「おしゃれして出かける場所ができた」と喜んでくれたことですね。それと、実は昨年、お店に泥棒が入って被害甚大だったのですが、町のみなさんが応援してくださって、立ち直ることができたんです。被害そのものよりも、その応援が身に沁みました。

拡大芳野まいさん=長野県北佐久郡軽井沢町

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筆者

芳野まい

芳野まい(よしの・まい) 東京成徳大学経営学部准教授

東京大学教養学部教養学科フランス科卒。フランス政府給費留学生として渡仏。東京成徳大学経営学部准教授。信州大学社会基盤研究所特任准教授。一般社団法人安藤美術館理事。一般財団法人ベターホーム協会理事。NHKラジオフランス語講座「まいにちフランス語」(「ファッションをひもとき、時を読む」「ガストロノミー・フランセーズ 食を語り、愛を語る」)講師。軽井沢との縁は深く、とくにアペリティフとサロン文化の歴史について研究している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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