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「ウクライナ避難民」を口実に入管法案を再提出するなら火事場泥棒だ

新制度は不要。国際基準に沿って「難民」に認定を

児玉晃一 弁護士

ロシアではなく、ウクライナ政府からの迫害の恐れがなければ当てはまらない

 ウクライナから国外に避難している方々のほぼ100%はロシア軍による攻撃を恐れてのことと思います。ですが、日本政府の「迫害」解釈では、迫害の主体は原則として「国籍国の国家機関またその政府」なので、ウクライナ政府からの迫害から逃れようとしている人以外の危険は「迫害」にあたらず、旧法案の「補完的保護対象者」には当てはまらないことになります。

 そして、筆者は2021年2月26日、「難民問題に関する議員懇談会」の会合で、出入国在留管理庁に対して、難民認定の解釈について変更するつもりがあるかどうか聴いたところ、ないと明言されました。ですから、「迫害」の解釈について、従来どおりの厳格なものを維持するのであれば、ウクライナから逃れてきた方々も「補完的保護対象者」には当てはまらないことになってしまいます。

 全国難民弁護団連絡会議調べでは、入管が公表している資料に基づき2017年~2019年に人道配慮で保護された人たちが、政府案による補完的保護対象者として保護されるか検討した結果、18件中13件が保護されないという結果となっています。

日本政府は数千人規模の虐殺からのサバイバーに、戦火のアフガンへ強制送還を命じた

 ですから、今回報道された「準難民」というのが、旧法案の「補完的保護対象者」と同じものであれば、ウクライナからの避難民はまず該当する人はいないと断言できます。

 ちなみに、筆者がかつて代理人をつとめたアフガニスタン難民は、1998年8月8日にタリバンが数千人を虐殺した「マザリシャリフの大虐殺」の際、脚を銃弾で撃ち抜かれる被害にあい、その後日本に来て難民申請をしましたが、日本政府は単なる内戦の被害者だから難民とは認めず、在留特別許可も認めないで、当時米軍によって空爆を受けている真っ最中のアフガニスタンへの強制送還を命じ

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筆者

児玉晃一

児玉晃一(こだま・こういち) 弁護士

1966年生まれ。早稲田大学卒業。1994年弁護士登録。2009年からマイルストーン総合法律事務所(渋谷区代々木上原所在)代表弁護士。1995年から入管収容問題、難民問題に取り組む。移民政策学会元共同代表、元事務局長。2014年からは”全件収容主義と闘う弁護士の会 「ハマースミスの誓い」”代表。2021年春の通常国会衆議院法務委員会では改定入管法に反対の立場で参考人として意見を述べた。著書・論文に『難民判例集』(2004年 現代人文社)、『「全件収容主義」は誤りである』(2009年 『移民政策研究』創刊号)、「恣意的拘禁と入管収容」(法学セミナー 2020年2月号 2020 日本評論社)などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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