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大谷翔平にしか適用されない「大谷ルール」が大リーグに導入された三つの理由

キーワードは「集客策」「分かりやすさ」「事態に合わせた柔軟な対応」

鈴村裕輔 名城大学外国語学部准教授

「ファンの要望に応える」という分かりやすさ

 2015年にコミッショナーに就任して以来、ロブ・マンフレッドは様々な新たな制度の導入をおこなっている。

 たとえば、守備側の監督が申告すれば、4球を投げることなく自動的に敬遠となる申告敬遠制度や、野手がマウンドに行ける回数の制限。投手は最低でも打者3人と対戦するか、登板イニングを終えるまで交代できない制度の導入、などである。

 「敬遠しようとした球を、選手が安打にするといった野球の持つ意外性を削ぐ」「ワンポイントリリーフによる打者と投手の駆け引きが失われる」「記録の連続性が損なわれる」などの批判があるにもかかわらず、こうした制度が導入されたのは、いずれも試合時間の短縮が狙いである。

 1999年まで平均試合時間が3時間を超えることはなかった大リーグは、2012年に12年ぶりに平均試合時間が3時間台になって以来、2時間台に戻っていない。打撃術が投球術を上回る進歩をみせ、捕手と投手のサインの交換に要する時間がかかったり、打者ごとの守備位置の細かく変えることが欠かせなくなったりした事情が大きく影響している。

 これは、野球全体の進歩という観点からは、好ましい状況かもしれない。そもそも、米国で最も人気のあるNFLも近年の平均試合時間は3時間10分台である。しかし、限られた時間を可能な限り有効に活用しようとする現代の人々の生活様式を考えれば、試合時間が延びることは現状にそぐわないというのが、機構の発想であった。

 そんななか、打者と投手とが高度に進化した現代の野球にあって、一人で両方を兼ねる大谷翔平は、既存の野球の枠組みを超える存在である。規格外というべき大谷が活躍することは、大リーグが多様な能力を持つ選手に門戸を開く進歩的な場であることを強調するには格好の材料となる。

 それゆえ、観客に「もっと見たい」と思わせる大谷翔平を、

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筆者

鈴村裕輔

鈴村裕輔(すずむら・ゆうすけ) 名城大学外国語学部准教授

1976年、東京生まれ。名城大学外国語学部准教授、法政大学国際日本学研究所客員所員。法政大学大学院国際日本学インスティテュート政治学研究科政治学専攻博士課程修了・博士(学術)。専門は比較文化。主著に『メジャーリーガーが使いきれないほどの給料をもらえるのはなぜか?』(アスペクト 2008年)、『MLBが付けた日本人選手の値段』(講談社 2005年)がある。日刊ゲンダイで「メジャーリーグ通信」、大修館書店発行『体育科教育』で「スポーツの今を知るために」を連載中。野球文化學會会長、アメリカ野球愛好会副代表、アメリカ野球学会会員。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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