人気低迷の中で思い出した「苦い経験」 厳罰の背景にある危機感
2022年05月03日
Jリーグは4月26日に理事会を開き、2020年12月のJFL(ジャパンフットボールリーグ)最終節で意図的な敗退を促す行為が認定され、2月から「Jリーグ百年構想クラブ」(J3への昇格ができる資格)の資格が停止されている鈴鹿ポイントゲッターズ(株式会社アンリミテッド)の停止期間を継続し、6月の理事会で最終判断すると発表した。
鈴鹿が百年構想クラブに戻るための条件は、①ガバナンスの健全な再構築と改善②スポンサー、自治体を含めた支援が継続されるかの2点。6月までにこれらの具体的策を示さなければ、百年構想クラブを失格する可能性もある。
野々村芳和Jリーグチェアマンは理事会後の会見で「ガバナンス、体制をどう作るかが一番重要」と、体制改善の具体案に期待する一方で、「ガバナンスも1、2カ月で簡単にできることではないと思う」とした。
そもそも、ガバナンスの抜本的な改革を、それほど迅速に行える常識あるクラブならば、こんな不祥事が起きるはずはない。チェアマンの「1、2か月で簡単にできない」との言葉にはそんな思いが伺える。
問題は2020年11月の最終節、ソニー仙台戦前の幹部の指示にある。鈴鹿は、同じ三重県のライバルクラブ「ヴィアティン三重」が、自分たちよりも先にJ3に昇格する状況を阻もうと考えた。そのために、仙台をより上位にしようと、役員らが選手に「故意に」敗退する指示を出した行為だ(ソニー仙台に0-1で敗退)。
昨年12月、鈴鹿の元役員がこの問題を告発して表ざたになり、まず、主催・運営するJFLの規律委員会が調査を開始。「八百長の企てとまでは言えない」と、関与した役員2名へのけん責、1名への処分保留、クラブに50万円の罰金処分を決定した。
しかし、JFLと共に主催・運営するJFA(日本サッカー協会)は、JFLの報告を受けてさらに調査を実施。ミーティングで選手に対し「連携ミス(を装って)でオウンゴールする」「ペナルティエリア内でファールしPKを(相手に)与える」(共にJFA調査報告)など、具体的な敗退指示を明らかにした。
スペイン人のミラグロス・マルティネス監督(当時)と選手の猛反発で、最終的には「正々堂々戦う」と書かれた誓約書を作成しており、JFA規律委員会も「試合で、わざと負けるためのプレーは確認されなかった」と判断した。しかし違法性は残るため、株式会社アンリミテッド代表取締役、鈴鹿ポイントゲッターズオーナー、告発した元執行役員にはそれぞれサッカー活動の禁止期間が処分として下され、クラブには500万円の罰金を科している。
背景には、日本サッカー界が過去「八百長」に関連して味わった苦い経験がある。
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