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有明の「格差の海」──佐賀西南部ノリ凶作に追い打ちをかける矛盾した判決

諫早湾が「ギロチン」で閉め切られて25年

永尾俊彦 ルポライター

共済金のために網を張ったも同然

大鋸武告さん(佐賀県有明海漁協大浦支所)
拡大大鋸武告さん(佐賀県有明海漁協大浦支所)=撮影・筆者

 鹿島市の南隣で佐賀県南部の太良町大浦地区のノリ漁師、大鋸武浩さん(52歳)の所属する大浦支所の今季のノリの生産高は支所のノリ漁家5戸全体でわずか約43万円。史上最低だ。

 ノリ漁は、タネつけをした網を秋に摘み取る「秋芽」と、タネつけ網を一度冷凍して、厳寒期に摘む「冷凍」の二期作が一般的だ。

 今季の大鋸さんは、秋芽は全くとれず、冷凍もわずか。「この4年間で保険(共済金の対象になる不作)が3回たいね」

 今季は秋芽の後も赤潮が消えなかったことから、冷凍も期待できないと考え、大鋸さんは支所にノリ網を張らなくても共済金(保険金)がおりるか聞いてみた。

 「網ば、張らんでもよかですか」

 「網を張らないと、保険はおりません」

 そこで、昨年12月28日に張るも案の定、早々に色落ちし、今年1月19日には引き上げた。共済金のために網を張ったも同然だ。

 有明海では、支柱を立ててノリ網を張る養殖方法が主流だが、大浦地先は支柱を立てるには深いことから、大鋸さんは海面にノリ網を流す養殖方法「ベタ流し」が中心だ。四六時中海中につかっているために硬いが、黒く味がいいノリがとれる。品評会で1位をとったこともある。

 大鋸さんも夏場はアサリ漁をしていた。だが2004年に全滅、

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筆者

永尾俊彦

永尾俊彦(ながお・としひこ) ルポライター

1957年、東京都生まれ。毎日新聞記者を経てルポライター。1997年の諫早湾の閉め切りから諫早湾干拓事業を継続的に取材。著書に『ルポ 諫早の叫び──よみがえれ干潟ともやいの心』(岩波書店)、『ルポ「日の丸・君が代」強制』(緑風出版)、『国家と石綿──ルポ・アスベスト被害者「息ほしき人々」の闘い』(現代書館)など多数。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです