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吉野家元常務の「生娘シャブ漬け」発言はネットに渦巻く醜悪な言葉に通じる

赤木智弘 フリーライター

 早稲田大学が主催した社会人向けマーケティング講座で「生娘をシャブ漬け戦略」「田舎から出てきた右も左もわからない若い女の子を牛丼中毒にする」などと発言した、当時吉野家常務取締役であった伊東正明氏の一件。

 早大は注意勧告の上、彼を講師から降板させ、吉野家は常務取締役を解任した。一見、この問題は幕を引いたかのように見えるが、僕はこの問題が彼だけの問題であるとは考えていない。

吉野家元常務の「生娘シャブ漬け」発言吉野家元常務の「生娘シャブ漬け」発言は、醜悪な言葉が飛び交うネット社会の反映なのか

 まず、僕が最初にこの問題を知ったとき、正直なんの興味も湧かなかった。なぜなら、この手の外部コンサル系は昔からこういうしょうもない発言をすることがよくあったからだ。

 自社の看板商品を「男性に高いメシをおごってもらうようになれば食べない」などと貶め、女性をターゲットにする中で「シャブ漬け」などと見下す感覚は、80年代のバブル期によく見られたようなステレオタイプである。そのくらいの古さを感じたし、逆に言えば昭和の経済を牽引したその手のキャラクターに、令和の今でも需要があるという経営層の体たらくぶりに呆れるほかなかった。

 口八丁手八丁でその場の目標を達成さえすれば後は野となれ山となれ、とばかりに、コンサル系の“アドバイス”に騙された社長が部下に素手でトイレ掃除を行わせたりする。そんな僕の「コンサル系への偏見」が、今回の問題でさらに強固になってしまったと言っていいだろう。

「田舎から出てくる生娘」をターゲットにしても手遅れ?

Cahya IlahiCahya Ilahi/Shutterstock.com

 さて、このマーケティング講座で伊東氏は、「女性をターゲットにしたマーケティング」の話をする一連の流れでシャブ漬け云々と語ったようだ。だが、僕は吉野家のマーケティングの柱に「女性」が含まれているとはまったく思っていなかった。

 吉野家の「小盛・超特盛」は伊東氏の企画らしく、小盛というのは確かに女性客の需要を喚起しているのだろうが、吉野家というお店の僕のイメージはやはり「男性がひとりで食事を手早く済ませる店」である。今のテレビCMでタレントの藤田ニコルを起用していることから女性にもアピールしているのかなとも思えるが、吉野家の店舗やメニューを見ているかぎり何が何でも女性を取り込もうとしている感じではない。

 一方で牛丼チェーン店としてハッキリと女性の客を増やそうという姿勢が見えるのは「すき家」である。

「すき家」吉野家に比べると女性や若者の支持が高い「すき家」

 いくつかの調査を見ると、全体的に若い人や女性にはすき家のほうが吉野家よりも人気がある。

 それは牛丼チェーンと言えばカウンターが常識だった時代から、すき家は積極的にテーブル席を増やしたり、CMで家族での食事シーンを多用するなど、男性のひとり飯のイメージが強い牛丼業界で、積極的にファミレス的イメージを導入し続けている成果である。

 女性需要だけなら、そもそも牛丼屋を利用しない女性も多いので吉野家にも分があるが、

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