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無二の親友に先だたれた日

[4月29日~5月8日]木内みどり映画祭、憲法記念日市民集会、大工哲弘ライブ……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

僕らは死者とともにこれからを生きていく

4月30日(土) 『報道特集』の生放送。前半の特集が「ウクライナ戦争で世界の資源価格高騰」。後半の特集が佐古忠彦ディレクター取材の日本軍特攻作戦に加わった隊員たちの思い。国家と個。これを見ながら僕は、ずっとウクライナのことを考えていた。特攻というのは、自らの命を自らで殺すこと。国家から強制された死の構造。

 生きなければダメだと思う。人間は弱い。殺すな! というメッセージが今ほど切実に迫ってくることはない。裏千家の前家元・千玄室氏(彼も特攻の生き残りだった)の言葉の重さに圧倒された。「日本の国体を汚されないように、汚されないように。こればかりでした。日本の国を誇り高い国だと思わせる。ちっともそういうことはない。高揚ばかり考えて。精神的な高揚より大事なのは、人間性ですよ」。こんなことを言えるなんて、大変な人格者だと思う。オンエア後、新宿へ。

5月1日(日) 朝、プールへ行きひたすら泳ぐ。毎日新聞のコラム記事。知床の観光船沈没について。

 旭川のMの亡骸が焼き場に移されている直前にようやく連絡がつく。茫然として言葉にならず。お見送りできなかった。えいちゃん。ごめんな。今度、ひとりで旭川に行くからさ。その時に、えいちゃんが大好きだったあのぎんねこの名物の焼き鳥(新子焼き)、買っていくからさ。

木内みどり映画祭」にて 筆者撮影.拡大映画祭「女優 木内みどり特集」にて=シネマハウス大塚、撮影・筆者
 ドキュメンタリージャパンの橋本佳子さんからお招きいただいたシネマハウス大塚の映画祭「女優 木内みどり特集」のイベントへ。橋本さんは故・木内みどりさんの無二の盟友だった。『ヴァギナ・モノローグ』をめぐる2人の女性(北原みのりさんと奥山緑さん)の対話。これがとてもよかった。僕は、木内さんの登場した日本版『ヴァギナ・モノローグ』は計2回みていたが、初回の記録が音声で残されていて、会場でそれを食い入るように聴いてしまった。死者は何ものかを残していく。それらを拠り所にして残された僕らは死者とともにこれからを生きていく。僕も、急逝したMとともに生きていく。

5月2日(月) 海保が斜里町の観光船運航会社を家宅捜索。携帯Wi-Fiの調子が悪く近所の業者に行くが、埒があかない。それどころかこちらが求めていた部品の交換ではなく、新規の契約を迫られそうになる。S社というところは経営姿勢がちょっとあこぎではないか。あしたの京都の宿がみつからず、まいった。どこもかしこも満室なのだった。

 16時半から早稲田のゼミ授業。特攻ストーリーをめぐって活発な討論。早稲田の客員教授を始めた年(2013年)のゼミの1期生のOが聴講にきていた。その後、新宿へ。明日の憲法記念日の講演の移動がきびしいことになりそうなので早めに帰宅。

 迂闊なことに、僕はNHK・Eテレのロシア語講座が、3月一杯で終了していたことを、今の今まで知らなかった。歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は笑劇として。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『抗うニュースキャスター』(かもがわ出版)、『漂流キャスター日誌』(七つ森書館)、『筑紫哲也『NEWS23』とその時代』(講談社)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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