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「ナナメの関係」で運営される「子ども食堂」の進化系~元ホストの代表にその極意を聞く

家でも学校でもない「第三の場所」の構築が必要

西郷南海子 教育学者

大切なのは「ワクワク感」

西郷  実はわたしの子どもも、Tera.Coyaにお世話になっています。いつの間にか友達同士で行くようになっていて、後からそれが子ども食堂だったのだと知りました。子どもが誘い合って行くような場の運営者として、特に大切にしていることは何ですか。

小林氏 子どもも大人も、楽しいことに集まります。ゲームなどの瞬間的な楽しさだけでなく、ワクワク感と「ああ楽しかった」という気持ち。また来たいと思ってもらえるためには、年齢の近いお兄さん・お姉さんがスタッフをやっているということや、子どもを子ども扱いしないということも大切です。

穴の開いた障子拡大穴の開いた障子
西郷  今の学校がそうですが、子どもの行動があらかじめ細かく決められていると、子どもの考える力が育たないのではと心配です。特にコロナ禍でルールにがんじがらめになりました。

小林氏 Tera.Coyaは家でも学校でもない、「第三の場所」です。だから、たとえば、ムシャクシャした時は障子を破ってもいいんです。人間だからいろんな感情があるのは当然です。その後一緒に張り替えればいいんです。

西郷  なるほど…。そうやって、子どもが自分の感情に気付けることは大切ですよね。家では、余裕がなくてそこまでしてあげられないことが多いと思います。

小林氏 ここでは、初めから禁止していることはありません。その場その場で大人が関わっていきます。その大人の価値観も多様です。まずは安全に自由に、その子らしく活動できればと思います。

コロナで「つながりの貧困」が生じるのはまずい

西郷  たくさんの子どもたちがハルさんにくっついていて、幸せそうです。子どもには「密」が必要ですよね。

「専務」の中1男子。トランシーバーを装着し、館内を見回る拡大「専務」の中1男子。トランシーバーを装着し、館内を見回る
小林氏 今は、知らない大人とは関われない世の中です。学校や塾など用意された場所でしかつながれません。関われる大人が少ないと、子どもの選択肢の幅が狭まってしまいます。

西郷  今は知らない大人が子どもに声をかけると、即「不審者」扱いになりますね。コロナの間はどうされていましたか?

小林氏 緊急事態宣言の時は、この会館が使えませんでした。でも会館の前で食事を配りました。コロナだから活動停止という選択肢はなかったです。それでも、週一の弁当に何の意味があるのかと自問自答しました。こんなことでは貧困は解決できない。でも、「つながりの貧困」なら、なんとかなるかもしれない。それが、将来の選択肢の幅を広げるのです。食事も勉強もコミュニケーションのツールです。「支援します」というのは好きじゃない。

※こうして話している間にも、子どもたちが周りを走り回り、その足音で小林氏の声が聞こえないほどである。中には、わたしの取材に興味を持って、パソコンをのぞき込む子どももいる。

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筆者

西郷南海子

西郷南海子(さいごうみなこ) 教育学者

1987年生まれ。日本学術振興会特別研究員(PD)。神奈川県鎌倉市育ち、京都市在住。京都大学に通いながら3人の子どもを出産し、博士号(教育学)を取得。現在、地元の公立小学校のPTA会長4期目。単著に『デューイと「生活としての芸術」―戦間期アメリカの教育哲学と実践』(京都大学学術出版会)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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