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神戸連続殺傷事件25年を追った秀作ドキュメンタリーが伝えたこと

NNNドキュメント’22「生きる力――神戸連続殺傷25年 途絶えた手紙」

川本裕司 朝日新聞記者

 ずっと追いかけてきた事件の番組で毎回、あっと思わせる事実を突きつけるテレビ制作者がいる。1997年に起こった神戸連続児童殺傷事件のドキュメンタリーを手がけてきた読売テレビ(大阪市)の堀川雅子さんだ。5月23日に放送されたNNNドキュメント’22「生きる力――神戸連続殺傷25年 途絶えた手紙」でも度肝を抜かれた。

事件が残したものと向き合う遺族の日々

「生きる力――神戸連続殺傷25年 途絶えた手紙」から ⒸNTV拡大「生きる力――神戸連続殺傷25年 途絶えた手紙」から ⒸNTV

 堀川さんがディレクターを務めたこの番組では、97年3月に神戸市須磨区で頭をハンマーで殴られ亡くなった山下彩花さん(当時10)の父親賢治さん(73)の現在に焦点を当てた。彩花さんをしのんで桜が植えられた小学校との関わり、命の教育を続ける長野県の中学校教師との交流、地域での少年野球の指導……。郵便局に勤めていた実直な横顔をとらえながら、事件が残したものと向き合う日々を描く。

「生きる力――神戸連続殺傷25年 途絶えた手紙」から ⒸNTV拡大山下彩花さん=「生きる力――神戸連続殺傷25年 途絶えた手紙」から ⒸNTV

 番組は日常のスケッチにとどまらない。97年5月に須磨区の中学校の正門に切断された頭部が置かれた土師淳さん(当時11歳)を殺したとして逮捕された中学3年だった少年A(14)が、彩花さん殺害の加害者だったこともわかった事件は世の中を震撼させ、少年法改正のきっかけになった。「酒鬼薔薇聖斗(さかきばら・せいと)」と名乗り新聞社に送られた犯行声明も大きな衝撃を与えた。

少年Aの身元引受人へのインタビューも

 番組では2004年に関東医療少年院を仮退院したAの身元を約1年間引き受けた男性のインタビュー映像を流した。「自分の部屋でCDを聴いていた」「絵を描くことに没頭していて一番の楽しみだった」。顔こそ映し出していなかったが、不意打ち取材ではなく、台所で座りながらじっくり聴いていた。この男性の本格的なインタビューはNNNドキュメントがおそらく初めてだっただろう。

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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞記者

朝日新聞記者。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを歴任。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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