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すき家の「ワンオペ」女性店員死亡事故の本質は、ワンオペにはない

赤木智弘 フリーライター

 2022年1月に、牛丼チェーン「すき家」の名古屋の店舗でアルバイトの女性店員(58)が倒れ、誰にも発見されないままに死亡していた事が明らかとなった。

 この店員は一人で働く、いわゆる「ワンオペ(ワン・オペレーション)」状態で、他の従業員がいなかったため、そして客から見えないところで倒れたために発見が遅れたとみられている。

 すき家のワンオペと言えば、2014年にワンオペや新メニュー発売によるオペレーションの高難度化といった複合要因により労働環境が急激に悪化。洗えないままの食器が散乱する店内の写真や、自称店員たちによる窮状の訴えがSNSなどで拡散され「すき家はブラック企業である」と強く非難された。それにより、すき家は一時的な店舗の閉店や24時間営業の休止を余儀なくされた。

市民団体のメンバーたちは、11日未明からすき家を回り、深夜勤務の状況などについて従業員に話を聞いた=都内2014年10月拡大すき家の労働環境が問題化した2014年、深夜勤務の状況などについて従業員に話を聞く市民団体のメンバーたち=都内

 批判の声に対してすき家は、深夜時間帯のワンオペ体制の見直しや、オペレーション全体の効率化、首掛けの緊急ボタンを身につける、レジのセミセルフレジ(商品情報を店員が入力し、支払いやおつりの受け取りなどは客がセルフで行う方式のレジ)化といった労働環境の改善が行われ、「すき家=ブラック」という印象は徐々に薄れつつあった。

 しかし、今回の事故により、深夜の状況は改善されても、一方で客足や作業負担の比較的少ない早朝の時間帯ではワンオペ体制で働いている人が多いことが明らかとなった。そこですき家は今回の問題で朝5時から9時までの時間でもワンオペを廃止すると発表した。

 最初にハッキリさせておきたいことがある。

 僕は今回の事故はワンオペだから発生した事故であるとは思っていない。もちろんツーオペ以上であれば、倒れた直後に救急車を呼ぶことができて命を救えたかもしれないが、問題の本質はそこではないと考えている。


筆者

赤木智弘

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター

1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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