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世界№1のブラジル戦で見えた「ロストフの14秒」の乗り越え方

サッカー日本代表は6月の4連戦をカタールW杯にどうつなげるか

増島みどり スポーツライター

 新国立競技場で最初のサッカー日本代表戦は6月6日、6万3638人が足を運びながら冷たい梅雨入りの日となり、「晴れの門出」とはいかなった。優勝回数5回は史上最多で、11月のカタールW杯(21日~12月18日)でも優勝候補筆頭とされる世界№1のブラジル代表「セレソン」(ポルトガル語で代表の意味)と通算13回目、2017年11月以来の対戦もまた、晴れとはいかず、止まない雨がまるで次から次へと振ってくる課題にさえ見える厳しい内容となった。

世界王者の驚異のシンキングスピード

 吉田麻也主将(サンプドリア)は「0-0の時間帯を長くしなければならない」と、現実的なテーマを掲げて臨んだ。森保一監督も堅い守備から試合に落ち着いて入ろうとプランし、DF4人に加え中盤の遠藤航(シュツットガルト)を交えた4プラス1、或いは田中碧(デュッセルドルフ)、原口元気(ウニオン・ベルリン)を加えた4プラス2とする4-3-3の布陣を敷いた。

ブラジル戦拡大後半、ミリタン(2)と競り合いながらドリブルをしかける三笘薫=6月6日 国立競技場

 しかし、エース・ネイマール(PSG)のゴール前でのヒールパスからパケタ(リヨン)にシュートを打たれるまでわずか2分。国立での代表戦デビューに女神がプレゼントをくれたのか、シュートはポストに当たり、試合を壊しかねない立ち上がりの失点は何とか回避。18年ロシアW杯後、森保ジャパンが重ねた49試合の、どの相手とも違う異次元の攻守のスピードは、ゴングと同時に強烈なストレートパンチを浴びて足元がぐらつくボクシングに見えた。

 わずかなスキは絶対に見逃さない。チャンスと見れば攻撃陣、時に守備陣まで畳みかける迫力溢れるスピードでシュートを打ってくる。世界トップ3の強豪国との対戦はロシアW杯以来。彼らは一瞬にしてゴールへの正確な設計図を描き、共有する。アジアや、親善試合では絶対に体感しない「思考(シンキング)のスピード」だ。その恐ろしいまでの速さは、ロシアW杯でベスト8に手をかけながら、当時世界3位だったベルギーに「ロストフの14秒」(ロシアのロストフで行われた決勝トーナメント1回戦、ベルギーの超速攻で最後の最後に振り切られた敗戦)の苦い味として、代表の中に残っていたはずだ。

 ブラジルのストレートパンチは、W杯ベスト8を狙うため、自分たちがどこからリスタートしなくてはならないのか、世界のトップを倒すために、あの時何が足りなかったのか、それを改めて教えてくれる「スイッチ」になったのではないか。

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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