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違法でなくとも重大なコンプライアンス違反を犯したサントリー

酒類とともに安倍氏側へ「隠れ蓑」を提供した真の理由を説明せよ

郷原信郎 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

「身内びいき」が表れた「桜を見る会」と前夜祭

 安倍晋三元首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭に、サントリーホールディングスが2016~19年に、1年あたり15万円程度、計約45万円の酒類を無償提供していたことが、刑事確定記録などで明らかになった。

 政治資金規正法は、企業から後援会など「その他の政治団体」への寄付を禁止しており、同法に抵触する可能性があること、既に、市民団体による同寄附についての「政治資金規正法違反」(収支報告書虚偽記入)の告発状が東京地検に提出されたことなどが報じられている。

 確かに、「桜を見る会」前夜祭の開催主体は、安倍晋三後援会(以下、「後援会」)である。企業であるサントリーが、酒類を政治団体である後援会に寄附したのであれば、違法な企業団体献金ということになる。

出席者が撮影した「桜を見る会」前日の夕食会の様子。安倍晋三首相と妻昭恵氏(左から2人目)らがグラスを手にマイクの前に立っている=2017年4月14日、東京都千代田区のホテルニューオータニ拡大出席者が撮影した「桜を見る会」前日の夕食会の様子。安倍晋三首相と妻昭恵氏(左から2人目)らがグラスを手にマイクの前に立っている=2017年4月14日、東京都千代田区のホテルニューオータニ

 それらの点について、政治資金規正法上の問題を解説する前に、改めて確認しておく必要があるのが、そもそも、この「桜を見る会」問題というのが、どういう問題だったのかということである。

 それは、政府の公式行事としての「桜を見る会」が私物化され、その機会に、地元選挙区の有権者に飲食を提供した「前夜祭」の公選法違反疑惑で安倍首相自身が厳しい追及を受けた問題であり、当時の第二次安倍政権による、日本の行政組織の支配構図と、安倍首相の「身内びいき」の姿勢、そして、安倍首相による国のリソースの私物化という「安倍政権の本質」が端的に表れた問題だったということである。

 本来、各界で功労・功績があった人達を慰労することを目的としているのに、功労者として招待された人間に対する接遇に気を遣うことはほとんどなく、一方で、安倍後援会関係者は、開場時刻前に何台ものバスで乗り付けて、ふんだんな飲食やお土産までふるまわれた。

 運営の実務を行う内閣府や官邸の職員には、「桜を見る会」が、安倍後援会側の意向で「地元有権者歓待行事」と化していることに違和感を覚えても、異を唱えることなどできなかったのは、森友・加計学園問題でもしばしば問題とされてきた、安倍一強体制の下での「権力者への忖度」が影響していたからとしか考えられない。

 開催経費が予算を超えて膨張していったのも、後援会の招待者が増え、地元の参加者に十分な飲食の提供など歓待をしようとする要求に抵抗できなかった結果であり、内閣府等の職員達には、各界の功労・功績者の慰労という本来の目的との関係を考える余裕はなかったのではないか。

 しかも、安倍氏は、「桜を見る会」前夜祭の問題が表面化した際に、首相官邸でのぶら下がり会見や、国会答弁で、数限りないウソをついて疑惑追及を交わし、批判をすり抜け、政権を維持しようとした。

 安倍氏は、それから半年余りで、第一次安倍政権の際と同様に、自民党総裁任期を残して首相を辞任することになった。

 それは、この「桜を見る会」前夜祭問題で重ねてきたウソの露見や、河井克行元法相の多額現金買収事件に関する自身の疑惑が刑事裁判での表面化の恐れがあったことなどからすると、必然的だったとも言える。

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筆者

郷原信郎

郷原信郎(ごうはら・のぶお) 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

1955年、島根県生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官などを経て、2006年に弁護士登録。08年、郷原総合コンプライアンス法律事務所開設。これまで、名城大学教授、関西大学客員教授、総務省顧問、日本郵政ガバナンス検証委員会委員長、総務省年金業務監視委員会委員長などを歴任。著書に『告発の正義』『検察の正義』(ちくま新書)、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)、『思考停止社会─「遵守」に蝕まれる日本』(講談社現代新書)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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