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「ゴリラゲイ雨」「ファビョる」……ネットスラングへの批判は言葉狩りか

赤木智弘 フリーライター

 東急ハンズが6月12日、公式Twitterで「ゴリラゲイ雨が来たらちょっと困るけど、ゴリラゲイ雨を見てみたい気もする」とツイートした。その後批判の声が高まったことから、「差別的な意図は念頭になく投稿したもの」としながらも、ツイートしたことを謝罪の上、削除した。

 「ゴリラゲイ雨」という言葉はそもそも「ゲリラ豪雨」の「ゲ」と「ゴ」を単純に交換してツイッター上で使われるようになったスラングである。しかし、「ゴリラゲウ雨」では若干発音しにくいため「ゴリラゲイ雨」と書かれることも多い。

 この言葉は出自だけみれば単なる言葉遊びとして特に問題は無いように思われるが、中には「ゲイ」の部分を「GUY」に変えたり、男性同性愛者向けAVの内容を当てこする人もいることから、この言葉に同性愛者を侮辱するような意味を見いだして遊んでいる人も決して少なくはない。

 「ゴリラゲイ雨」はそういう微妙な問題を含んだ言葉であり、東急ハンズ側も批判を無理に突っぱねるよりは早めに謝罪して削除する対応を選んだのだろう。

FGCshutterstockmetamorworks/Shutterstock.com

 企業のツイッターには、自社のサービスアピールに終始する無難なツイートを繰り返すアカウントもある中で、ユーザーに親しんでもらうために積極的にネットの仲間と見なしてもらおうとするアカウントも多い。ネットニュースなどで話題を呼ぶこともあることから、広報活動のための堅苦しさを捨てて、ネットユーザーに親和的なツイートを投稿する企業もある。

 そうした中で、時には今回のようにネットスラングを拾っていく必要もあるのだろう。

 だが問題なのは、ネットスラングには差別的な意味を包有する言葉が数多く存在することだ。

本来の意味を知らないで使われるネットスラング

HollyHarry/Shutterstock.comQualit Design/Shutterstock.com

 6月にあるVTuberが「何こいつ超ファビョってんの」などと共演者に発言したことに対し、所属事務所は、本人への厳重注意とコンプライアンス研修を実施したと発表した。

 「ファビョる」は最近ではあまり使われなくなった古いネットスラングで、「韓国人はすぐ激怒する、何にでも怒っている」として侮蔑する言葉である。

 特に日韓の歴史問題の話題が出てきたときに、ネット上で韓国側を揶揄する際に使われることが多かったが、その後韓国とは関係なく、相手を煽ったりバカにする際などにも多用されるようになった。今でもふとした拍子に見かけることも多く、その意味を十分に理解しないままに使われても決して不思議ではない。

 では、知らずに使ってしまった人は批判されるべきだろうか。

 僕は基本的には、その言葉の元の意味を当人に知らせた上で、今後は使わないように注意するべきであると考えている。

 なぜなら、その言葉をカジュアルに使い続ければ、いつまで経っても多くの人たちに使われ続け、その結果、その言葉の本来の意味で嘲笑の対象になっている人が被害を受け続けてしまうからである。

 そうした差別的な出自があったり、後から差別的な意図が含まれるようになった言葉は、フェイドアウトして使われなくなるべきだし、そうした言葉に飛びつく人がひとりでも少なくなればいいと僕は考えている。

東急ハンズへの批判に反論する人たち

TOPZubadaartist designe/Shutterstock.com

 一方で、そうした言葉を使う人を批判したり注意することに対して「言葉狩りである」と主張する人がいる。

 今回の東急ハンズの謝罪に対しても「ハンズへの非難は言葉狩りだ」という批判があった。

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