なぜ障害のある教員は少ないのか?~研修に携わった経験からみえてくること
障害児のための教育と教育現場のパターナリズム
三谷雅純 大学教員、霊長類学・人類学の研究者、障害当事者
漢字の偏(へん)と旁(つくり)がうまく書けない~私の「学習障害」
最初はわたし自身の障害の説明です。わたしの右半身マヒという話題は、肢体不自由児の中でも一番多い脳性マヒの子どもに通じます。皆さん、真剣な顔をして聞いてくれています。
わたしに困ることは、後ろから「三谷さん」と声をかけられると筋緊張が上がってしまうことだと言って、参加者によく見えるように前を向いて、マヒした側の腕や足の筋緊張が上がったようすを真似ると、皆さん、よく見るために顔を動かし、首を傾けて熱心に見てくれるのです。
ただし、これはわたしにとって意外でした。なぜと言って、わたしと同じように脳梗塞の後遺症の人は街中によくいるのですから、日頃から障害のある子どもを見ている先生は後遺症のようすも見ているに違いないと思い込んでいたからです。本で読んで知ってはいるが、しげしげと見るのは初めてなのでしょうか?
「学習障害」もわたし自身の説明です。漢字の「学習障害」と言われている症状は、わたしの左右利き――父方の遺伝で、わたしは右利きでもない、左利きでもない、右でも左でも使える左右利きなのです。そのため、右手で操作や入力していたキーボードを、病気した後、左手で入力し始めた時にも、さほど苦労はしていません――を説明してから、続けて漢字が書きにくい理由を説明します。つまり、わたしは右と左がゴチャゴチャになって漢字の偏(へん)と旁(つくり)がうまく書けないこととか、その代わり鏡文字は得意なこととかの説明をするのです。
わたしは国語は得意だったのですが、漢字の書き取りだけは、まったくできませんでした。おかげで国語の先生は「三谷はさっぱり勉強する気がないんだな」とよく呆れていました。研修でそのことを伝え、どうぞ学習障害かもしれない子どもたちに「やる気がない」などとは言わないようにして下さいとお願いすると、よく理解できたという表情で頷くのでした。

読み書きが苦手な男の子が、漢字を覚えるためフレーズを作り、ノートに書く。「逆」は、「ソッと一人で山ノ(みち=しんにょう)で逆だちした」=金沢市