祇園祭宵山、壬生寺にて新選組隊士等慰霊供養祭に併せて上演
2022年07月12日
祇園祭は、疫病退散を願い、あらゆる災いを祓(はら)ってくれる祇園の神さん(素戔嗚尊=スサノオノミコト)に、京の市中(氏子町)に来てもらう祭りである。
思いもよらぬコロナ禍にあって、昨年まで祭の中断を余儀なくされ、今まさに祇園祭の意味を知る。ようやく今年、山鉾巡行が実施される、待ち侘(わ)びての再開である。
7月16日、祇園祭の宵山は、いつの世も町衆の熱気が高まる。その活況の中、元治元(1864)年に起きたのが池田屋事件であった。三条小橋にあった旅館池田屋に新選組が踏み込み、勤皇派志士を襲撃、壮絶な死闘となった。さらに、これに憤激した長州藩が蜂起上京し、禁門の変へとつながっていく事件である。
新選組同好会の人々は、文久3(1863)年に新選組が大丸の呉服商(現・大丸松坂屋百貨店)にオーダーした浅葱(あさぎ)色にダンダラ模様の羽織を復元して隊士姿に扮装しており、見る者を魅了する。
池田屋騒動で亡くなった新選組隊士のみならず、襲撃された長州藩士ならびに幕末の志士を供養する法要で、昭和46(1971)年より始まり、半世紀以上続いている。
さらに今年の宵山は、慰霊供養祭に併せて、東映京都撮影所俳優部所属の女優まつむら眞弓さんによる朗読公演が上演される。壬生寺境内にある塔頭「中院」の本堂で行われる。洛陽三十三観音霊場の二十八番札所である。本尊十一面観音菩薩(ぼさつ)が背後で見守るなか、まつむら眞弓さんの語りと、津軽三味線の川合絃生(かわいげんしょう)さんの生伴奏のみが繰り広げる‘物の怪’語りの世界である。
先日、壬生寺中院で行われたリハーサル風景を拝見したが、まつむらさんが語り出すやいなや、背筋にぞわっと戦慄(せんりつ)が走った。舞台に仕掛けがあるわけでもなく、ただまつむらさんの語りと、三味の音と、ツケ板を打つ響きだけである。
まつむらさんは、映画「北の桜守」「最高の人生の見つけ方」「花戦さ」をはじめ、テレビでは「科捜研の女」「遺留捜査」「特捜9」など名だたるドラマに出演。その傍ら、京ことばによる怪談朗読に取り組まれ12年になる。怪談を語るきっかけとなったのが、嵐電京福電車の車内で「耳なし芳一」と「牡丹灯籠(ぼたんどうろう)」を上演したことによる。以来、京都法然院や東京の泉岳寺をはじめ全国各地で公演。その活動は日本にとどまらず、遠くアメリカサクラメント市でも上演され、今年「京都もののけかたりの会」を立ち上げられた。
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