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安倍元首相殺害事件が照射する自民党とカルト宗教との親和性

北丸雄二  ジャーナリスト、コラムニスト

 明らかにされている山上徹也容疑者の供述から判断すると、安倍晋三元首相殺害はいまのところ宗教団体に入れ上げた母親による家庭崩壊と破産への恨みに基づくものであり、テロや暗殺と呼ぶべき政治的あるいは宗教的な動機は薄いということになっている。

 もっとも、元首相をこの宗教団体=旧「統一教会」(現「世界平和統一家庭連合」)と関連づけて殺害しようと強く決意するためには、両者の間にある政治的で宗教的な背景と歴史とをかなり調べ込む必要があったろう(以下、敬称・呼称略)。

旧統一教会と安倍元首相との「距離」

女性が世界基督教統一神霊協会から購入した商品の一部
写真説明	千葉県内の女性が統一教会から購入させられたという商品の一部2008年拡大信者の女性が統一協会(当時)から高額で購入させられた壺などの商品。「霊感商法」として社会問題化した=2008年
 「世界平和」とか「家庭」とかやわらかい言葉に変名していても、「統一」という単語を残しているこの宗教集団は、かつて合同結婚式や霊感商法で社会問題化し、日本ではオウムが現れるまではカルトの代名詞的な組織だった。70、80年代には「統一教会」教祖文鮮明の提唱する教理「統一原理」を研究するサークル「原理研究会」が全国の大学で増殖し警戒された。教会による洗脳や家族との断絶、脱会をめぐる騒動や反対運動に対する執拗な脅迫もメディアを賑わせた。

 その文鮮明が政治組織として1968年に創設したのが「国際勝共連合」だ。

 冷戦構造下、神の摂理に反する「サタンの共産主義」に打ち勝つことを使命とした韓国および日本の勝共連合は、当時の朴正煕韓国軍事独裁政権の庇護を得、日本の笹川良一、児玉誉士夫、岸信介ら右翼や反共政治家とも繋がった。自主憲法論者で再軍備を主張する安倍元首相並びに清和会の勝共との親和性は、祖父の代から続くものだ。

 一方で統一教会の方は90年代から社会的バッシングに遭い、保守政治家たちも距離を置くことになる。が、名称を「世界平和統一家庭連合」と改め、ここ十数年で政界右派に再接近していた。「世界平和」と「家庭」なら、「統一教会」という名称にこびりついたスティグマやアレルギーもかなり躱(かわ)せる。

 事実、元首相も「強靭な国・日本」「救国ロードマップ」などの大見出しとともに国際勝共連合の機関誌「世界思想」の表紙を何度も飾り、昨年9月には同じく文鮮明とその妻が創設した統一教会の友好団体「UPF(天宙平和連合)」の集会に5分間のビデオ・スピーチを送った。山上はこのビデオで両者の関係を自らに焼き付けたようだ。

 ちなみに同集会ではドナルド・トランプもビデオ基調講演を行い、元首相は「世界平和を共に牽引してきた盟友トランプ大統領とともに演説する機会をいただいたことを光栄に思う」「UPFの平和ビジョンにおいて家庭の価値を強調する点を高く評価する」と笑顔で祝辞を述べている。

安倍晋三元首相の銃撃を受けて会見する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長=2022年7月11日、東京都新宿区拡大安倍晋三元首相の銃撃を受けて会見する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長=2022年7月11日、東京都新宿区

 世界平和統一家庭連合会長は7月11日の記者会見で「教会に対する恨みから、安倍元首相の殺害に至るには大きな距離があって困惑している」と話したが、山上は「家庭を壊した統一教会を日本に招いたのが岸信介で、その孫の安倍を狙った」と供述したという。安倍殺害現場は、世界平和統一家庭連合の奈良家庭教会から300mと離れていない。応援演説の聴衆の中にも教会員が少なからずいたという。山上にとっての二者には「大きな距離」はなかった。

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筆者

北丸雄二

北丸雄二(きたまる・ゆうじ)  ジャーナリスト、コラムニスト

毎日新聞、東京新聞(中日新聞)社会部から同ニューヨーク支局長を経て1996年に退社し在ニューヨークのまま執筆活動。2018年帰国。著書『愛と差別と友情とLGBTQ+──言葉で闘うアメリカの記録と内在する私たちの正体』 (人々舎)で「紀伊國屋じんぶん大賞2022」2位受賞。訳書に『LGBTヒストリーブック──絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』(ジェローム・ポーレン著、サウザンブックス社)、絵本『ぼくらのサブウェイ・ベイビー』(ピーター・マキューリオ作、レオ・エスピノーサ絵、同社)など多数

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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