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統一教会が繰り広げてきた反LGBT運動

政治家と結びつく一方で、各地で草の根の取り組みも

遠藤まめた 社会活動家

 「論座」は「論座シンカ計画」の柱の一つとして、様々な社会課題に直面している当事者や、課題解決にとりくんでいる人たちの論の紹介に取り組んでいます。その一環として、自らもトランスジェンダー男性として性的マイノリティーの若者支援を中心に活動している遠藤まめたさんの連載「まめたの虹色時評」を始めます。第1回は旧統一教会のアンチLGBT運動がテーマです。(編集部)

活動現場でしばしば反LGBT運動を目にしてきた

 元首相の暗殺という衝撃的なできごとをきっかけに、統一教会(現在の名称は「世界平和統一家庭連合」。以下、本稿では「統一教会」と記述)に注目が集まっている。犯人の母親は統一教会に対して1億円を超える献金を行い、家庭崩壊を招いたことから、犯人は統一教会に恨みを抱いていた。安倍氏をターゲットに選んだのは統一教会の広告塔のひとりであると犯人が認識していたからだという。

 安倍氏を含む多くの政治家がこれまで統一教会がらみの団体のイベントに登壇したり挨拶を寄せたりしてきたことは事実である。なかには統一教会から秘書を派遣してもらっていた政治家もいるという。今回の殺人事件がいかなる理由でも許されない凶行であったこととはまた別に、統一教会のような多くの献金をめぐるトラブルを生んできた団体と政治家の関係については、きちんと論じられる必要がある。

 さらには、統一教会はLGBTの権利拡大や性教育推進などに反対してきた活発な勢力の一つとしての顔も持つ。私は宗教や政治の専門家ではなく、トランスジェンダー当事者の立場からLGBT運動に関わっているひとりだが、これまで活動の現場で、統一教会による反対工作を目にする機会はしばしばあった。あまり一般には知られていないようなので、これを機に認知が広まればと思い、本稿を綴ってみる。

渋谷区内に投函されたパートナー制度反対のビラ

渋谷ビラ拡大渋谷区内で配られたビラ

 2015年3月、友人から「こんなチラシを見つけた」と連絡をもらった。

 友人が転送してくれたビラには「伝統的な家庭制度に混乱もたらす渋谷区条例案 同性カップルに『結婚相当』証明書」と書かれてあった。どうやら東京都渋谷区内に投函されていたらしい。その頃、渋谷区では、同性カップルに対して結婚に準じる関係と認めて「パートナーシップ証明」を発行する全国初の条例案が議会で決議されようとしていた。

 発行団体は「家庭を守る渋谷の会」とある。こういうことをするのは宗教団体なのだろうなとすぐに察した。ビラを配ってあちこちに配布する財力もボランティアのパワーもだいたいの市民団体にはない。チラシにあった電話番号を検索してみると案の定「Pure Love Alliance Japan」という統一協会系の別組織とみられる団体の番号と同一であることがわかった。

 その後、渋谷区の条例は無事に成立した。渋谷区や世田谷区を皮切りに、パートナーシップ制度はその後、全国の自治体に波及していく。けっして順風満帆というわけではなく、パブリックコメントを行えば反対意見が組織的に寄せられ、地元の当事者団体らがそれぞれ苦労しながら自分たちの事情を議員に伝え、なんとか広がっていたのがこの制度だった。

 渋谷区と同様、住民に対してパートナーシップ制度反対のビラや冊子が投函された事例もある。

「自分を否定されているようで怖い」

 秋田市で活動する市民団体「性と人権ネットワークESTO」は、2020年10月に「過激な同性婚合法化運動に気をつけよう」と書かれたチラシが住民に投函されたことを明らかにしている。そこには「男女の結婚を法律で特別に保護するのは、子どもを産み育てるために一夫一婦の安定した関係を守ることが大切だから。もし、子どもが生まれない同性同士の恋愛も結婚と認めるなら、愛し合っていれば一夫多妻でも良いことになります」などと書かれていて、投函された人からの連絡を受けESTOは警察署や法務省に相談をしている。10月13日付の秋田魁新聞ではチラシを自宅に投函された当事者の「自分を否定されているようで怖い」とのコメントが紹介されている。

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筆者

遠藤まめた

遠藤まめた(えんどう・まめた) 社会活動家

一般社団法人にじーず代表。1987年埼玉県生まれ。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をきっかけにLGBTの子ども・若者支援に関わる。著書に「先生と親のためのLGBTガイド 〜もしあなたがカミングアウトされたなら」(合同出版)、「みんな自分らしくいるためのはじめてのLGBT』(ちくまプリマー新書)ほか。トランスジェンダーの情報サイト「trans101.jp」主宰。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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