Amazonのジェフ・ベゾス氏は、どのようにワシントン・ポストを再生させたか〈連載第7回〉
競争優位の政治報道を中核に「選択と集中」「スクラップ・ビルド」を断行
小田光康 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長
記者クラブ制度などの参入障壁が存在するうえ、値引き販売を禁止する「新聞の特殊指定」による保護産業的な色彩が濃い日本国内の報道メディア業界と異なり、米国の報道メディア業界は完全競争市場的で新陳代謝が激しい。
2008年には名門紙「ロサンゼルス・タイムズ」や「シカゴ・トリビューン」などを傘下に持つメディア・コングロマリットのトリビューン社が倒産した一方、その頃から高級紙としてしられる「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」紙を発行するNYT社やWall Street Journal紙を発行するNews Corporation (ニューズ社)は業績を一段と伸長させている。報道メディア界から退場を余儀なくされる企業もあれば、そこに新たに参入してくる企業もある。
前回のTwitter社の事例に引き続き、今回も報道メディア界への新規参入事例として、米国Amazon社の創業者、ジェフ・ベゾス氏による米有力紙のワシントン・ポスト(以下、WP)紙を発行するWP社の買収劇とその後の展開について述べていきたい。
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伝統的な報道メディア企業であるNYT社や、メディア・コングロマリットとして君臨するNews社とは異なり、ベゾス氏率いるWP社の競争戦略はデジタル・トランスフォーメーション(DX)を活用した企業再生という点で異彩を放つ。
ここでは「選択と集中」と「スクラップ・ビルド」、デジタル時代の「規模の経済」、そして、「水平的分業とモジュール化」のそれぞれに注目して、報道メディア業界への新規参入としてWP社を分析していく。

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