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陸上競技の“聖地”でメダル4個 オレゴン世界陸上の収穫と課題

「素晴らしい雰囲気が生んだ魔法」を25年の東京開催につなげられるか

増島みどり スポーツライター

 2021年に行われるはずだった陸上の世界選手権オレゴン大会(オレゴン世界陸上)は、東京オリンピックの延期に伴い22年に繰り越され、2年越しの祭典は7月24日に閉会した。会場となった「ヘイワード・フィールド」(ヘイワードはオレゴン大陸上部の名将の名前)は、米オレゴン州ユージーンのオレゴン大の敷地内にある大学の施設だった。

開会式拡大陸上世界選手権の開会式が行われた米オレゴン州ユージーンのヘイワード・フィールド=代表撮影、2022年7月15日

3個の世界新を生んだ「ヘイワード・マジック」

 アメリカでも、世界的にも珍しい陸上専用のトラックとして、数々の記録や記憶を生む「ヘイワード・マジック」とともに人々に深く愛されてきた聖地である。この場所での世界陸上開催が決定し、ユージーンをルーツとする「ナイキ」と、同社の創設者が約330億円の資金を提供して改修。約1万2650人、可動式座席で最大2万5000人を収容できるようになった「新・聖地」で、男子200メートル準決勝に進出したベテラン、飯塚翔太(31=ミズノ)がレース後明かした話が印象に残る。

 大会1週間前にランキングでの出場が急きょ決定し、戸惑いもあるなか、自身3回目の準決勝進出の任務は果たした。難しい予選を終えた後、飯塚はこう話した。

ブラウン拡大男子200m予選の1回目のスタートで転倒したカナダのアーロン・ブラウン。手前は飯塚翔太=代表撮影、2022年7月18日

 「アットホームというか、すごく温かい声援に押されて走っている感覚でしたね。僕ら競技者でも初めて見るようなアクシデントにも、観客が一斉に大きな拍手や声をかけて彼を励まし、聖地のファンはすごいな、と思いました」

 同組で走った30歳のベテラン、アーロン・ブラウン(カナダ)は、スターティングブロックでスリップしたのか、トラックにうつ伏せで倒れ込んでしまう前代未聞のアクシデントに遭う。その時ファンが一斉に立ち上がって、彼に向かって大きな歓声や励ましの拍手を送る様子に自らも励まされたという。好記録やパフォーマンスへの「スタンディングオベーション」は見かけても、予期せぬアクシデントで選手を励ますのは陸上を熟知している証しだろう。

 飯塚は「ああいう素晴らしい雰囲気が魔法を生むんですね」と話す。

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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