刑事罰を適用した件数は非常に少ない
霊感商法とは、霊界や先祖の因縁、祟りなどの話題で人をことさら不安や恐怖、混乱に陥れ、そこにつけ込んで壺や印鑑などを法外な値段で買わせる悪徳商法の一つである。具体的な物(商品)ではなく、祈祷料や供養料などの名目で多額の金銭を要求する場合もある。
霊や先祖の因縁など、何を信じるか、あるいは信じないか、また自分が信じることを人に勧めるかどうかは信教の自由である。しかし、霊感商法の場合は、今ある不幸の状態は先祖供養を怠ったからだとか、財産を神に捧げると地獄で苦しむ先祖の霊が救済され、本人にも幸せが訪れるといったような話が、かれらの持てるテクニックを尽くして被害者に対して巧妙にたたみ込まれていく。ときには密閉された部屋に長時間軟禁され、頭がもうろうとした状態で高額な開運グッズの購入や、教団への多額の献金を約束させられたりする。
しかし、このような霊感商法がただちに詐欺罪に該当するのかといえば、そこには信教の自由の問題があって単純に線引きできるものではない。詐欺とは、嘘を言って相手をだますことが前提であるが、宗教上の教義は自然科学とは異なった別次元の話であるし、たとえば霊魂の存在にしても、そのような考え(教義)の真偽を物質的世界の問題として判定することができないからである。実際、霊感商法に刑事罰を適用した件数は非常に少なく、立件の難しさを物語っている。

旧統一教会の教祖ら幹部と政治家の関係について説明する「全国霊感商法対策弁護士連絡会」事務局長の山口広弁護士(右)=2022年7月12日
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