35歳でFC岐阜社長を務めた私がALSを発症し、8年を経て思うこと
必要なのは「家族という名の介護者」ではなく「家族という名の理解者」
恩田聖敬 株式会社まんまる笑店 代表取締役社長
ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者である恩田聖敬さんの連載「健常者+ALS患者の視座から社会を見たら」が始まります。35歳でJリーグFC岐阜の社長を務めるなど、恵まれた人生を送ってきた恩田さんは、ALSを発症したことによって視野や価値観や人生観が途方もなくひろがったといいます。
発症前には見えなかった何が見えるようになったのか。どう価値観や人生観が変わったのか。その体験に触れることで、私たちの視野もひろがるのではないでしょうか。
さまざまな体験を共有する場となることが、論座のシンカ(進化や深化)のひとつの方向性ではないかと考えています。読者のみなさまも、お互いの体験を共有しながら、ともに論じあいませんか。info-ronza@asahi.com にメールでいただければ幸いです。
(「論座」編集長・松下秀雄)
私はこの原稿を口で書いています

自宅のベッド上で口に噛むチューブでiPadを操作する私(筆者提供)
読者の皆様はじめまして。ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の恩田聖敬(さとし)と申します。
この名前の漢字でさとしと読むのは日本で私だけと自負しております。皆様、どうか名前だけでも覚えてください。またもし何処かに聖敬(さとし)さんがいれば必ず一報ください(笑)
私はこの原稿を口で書いています。iPhoneやiPadのスイッチコントロール機能と咀嚼筋を駆使して、iPadを自由自在に操っています。メール、ブログ、SNS、ネットで買い物、なんでも出来ます。私はALSによって腕を含めた全身がほぼ動きません。この身体でスイッチコントロール可能な箇所はどこか? そこで目をつけたのが咀嚼筋でした。私、噛む動作は比較的出来るのです。
因みにこのスイッチコントロール機能は、皆様のiPhoneやiPadに標準搭載されています。知らなかったですよね? アメリカでは、障害者の操作に配慮した機能がないと、行政が使用するものとして入札に参加出来ないそうです。こんなこと健常者の世界に居たら知る由もありません。
私は35歳でALSを発症して障害者の世界に否応無く引き込まれました。それによって私の視野とか価値観とか人生観は途方もなく拡がりました。健常者と障害者の世界を両方体験した当事者だからこそ出来る話をしたいと思います。どうぞ最後までお付き合いください。
>>この記事の関連記事