岸田首相の理由説明なき「統一教会との訣別」は、更なる大混乱を招く
安倍元首相と教団との関係をあらためて解明せよ
郷原信郎 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士
どういう理由で「関係を断つ」のか
まず、国葬については、殺害事件直後に、岸田首相自身が拙速に「国葬儀」を実施する方針を打ち出した時点で、社会の「分断」「二極化」が拡大し、不測の事態の重大なリスクに備えて膨大なコストがかかることを指摘していた(【安倍元首相「国葬儀」が抱える重大リスクに、岸田首相は堪え得るか】)。
予測していたとおり、世論調査では、国葬に反対する意見が多数に上る一方、岸田首相が当初から強調していた海外からの多数の弔意にもかかわらず、各国からの現職のトップの参列はほとんどなく、「弔問外交」が期待できるような状況ではない。国民に対して「弔意」を求めないとすると、明確な法的根拠もなく、閣議決定だけで「国主催の葬儀」を行う意味は一層希薄になる。岸田首相は「丁寧な説明に全力を尽くす」と言うが、そもそも説明できる内容がほとんどない。
「統一教会問題」については、内閣改造の時点で、何がどう問題なのかを全く示さないまま「厳正に見直す」として、個人の対応に委ねていたことに根本的な問題があった。今回の会見では、「所属国会議員は、過去を真摯に反省し、しがらみを捨て、当該団体との関係を断つ」と述べ、その後、茂木敏充幹事長が自民党としての「統一教会との訣別宣言」を行った。しかし、肝心の「統一教会の何がどう問題だから訣別するのか」という点は、岸田首相も、茂木幹事長も何も述べていない。
旧統一教会は、今も、宗教法人として国に認証され、法人格が認められ、税制上の優遇措置も認められている。自民党がそのような法人と「関係を断つ」というのであれば、それはいかなる理由によるのかを明確に示す必要がある。ところが、岸田首相は、それについて何も述べていない。
・・・
ログインして読む
(残り:約4391文字/本文:約6195文字)