主権平等に反し、デュー・プロセスも無視した他国への領土提供
2022年09月09日
2022年8月16日、鹿児島県西之表市に所在する馬毛島において、大規模な基地建設事業が事実上始動した。
馬毛島は、鉄砲伝来でその名を馳せている種子島の西12㎞に位置する小島で、世界自然遺産の屋久島も程近い。いま、南西諸島において、中国脅威論等を背景にした自衛隊ミサイル基地建設が続々と進められており、馬毛島での事業もその一環として位置づけられる。
しかし、馬毛島の基地建設事業は、与那国島、石垣島、宮古島、奄美大島のそれとはやや様相が異なる問題点を抱えている。
たとえば、馬毛島に予定されている基地には米軍の駐留が予定されていること、国による用地取得が未了であること、不可逆的な自然環境破壊のおそれがあること、伝統的な漁撈文化の消滅を伴うこと、の4点を主な問題点として挙げることができる。これらは、単に社会的に問題があるばかりでなく、法的にも大きな問題を抱えている。
まず、なぜ、米軍は馬毛島に建設が予定される基地を使用できるのであろうか。2022年1月7日に、日米安全保障協議委員会(日米2+2)が開催され、日本側は、馬毛島における施設整備を進め、環境影響評価手続きが終了した後に着手する建設工事の経費を2023年度予算案に計上し、早期の整備に向け日本政府全体として努力していくことを表明し、アメリカ側は、これを歓迎する意を表明した。
なお、アメリカ側は、あくまでも「歓迎」しただけで、「合意」をしたわけではない。馬毛島の「施設」とは自衛隊基地を指すが、いずれそこはアメリカ軍の空母艦載機着陸訓練(Field Carrier Landing Practice:FCLP)に恒常的に供与される予定だという。
FCLPは、空母ミッドウェイが横須賀を母港化した1973年に三沢、岩国の各飛行場で開始され、1983年からは主として厚木飛行場で実施されていた。しかし、市街化が進展したため、特に夜間訓練による深刻な騒音問題が発生して周辺住民による抗議活動や長期の裁判闘争も展開された。また、アメリカ側も、厚木飛行場では十分な訓練ができないとして、代替訓練場の確保を要請し、暫定措置として1991年から硫黄島での訓練を実施している。
しかし、アメリカ側は、硫黄島は厚木飛行場から約1,200㎞と遠く、訓練に多くの負担や制約があるうえに、緊急時の代替飛行場もなく危険性を伴うことから代替訓練場の確保をさらに強く要請するようになる。そこで、関係者が注目をしたのが馬毛島である。
「馬毛島は無人島である」ということが、基地建設候補地たる根拠として、たびたび関係者や一部マスコミ報道で語られる。しかし、無人島であれば他国に、しかも他国の軍隊に供与しても構わないのであろうか。
そもそも、
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