奥田進一(おくだしんいち) 拓殖大学政経学部教授
1969年川崎市生まれ。1995年3月早稲田大学大学院法学研究科修了。放送大学客員教授、早稲田大学社会科学総合学術院客員教授、西東京市建築紛争審査会委員などを兼務。著書に『環境法へのアプローチ』『中国の森林をめぐる法政策研究』『環境法のフロンティア』『共有資源管理利用の法制度』『森林と法』『後藤新平の発想力』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
主権平等に反し、デュー・プロセスも無視した他国への領土提供
2022年8月16日、鹿児島県西之表市に所在する馬毛島において、大規模な基地建設事業が事実上始動した。
馬毛島は、鉄砲伝来でその名を馳せている種子島の西12㎞に位置する小島で、世界自然遺産の屋久島も程近い。いま、南西諸島において、中国脅威論等を背景にした自衛隊ミサイル基地建設が続々と進められており、馬毛島での事業もその一環として位置づけられる。
しかし、馬毛島の基地建設事業は、与那国島、石垣島、宮古島、奄美大島のそれとはやや様相が異なる問題点を抱えている。
たとえば、馬毛島に予定されている基地には米軍の駐留が予定されていること、国による用地取得が未了であること、不可逆的な自然環境破壊のおそれがあること、伝統的な漁撈文化の消滅を伴うこと、の4点を主な問題点として挙げることができる。これらは、単に社会的に問題があるばかりでなく、法的にも大きな問題を抱えている。