禁錮刑を定めた刑法条文の廃止を首相が言明 変化は一直線ではないけれど
2022年09月09日
国際NGOなどの情報によれば、2022年7月時点で世界では同性間の性的関係について刑法で規制している国は70カ国ある。うち12カ国は死刑で、27カ国は禁錮10年から終身刑、31カ国が禁錮10年未満となっている。今回はそのような国の一つ、シンガポールで近く同性間の性的関係を違法とする規定がなくなるようだ、というニュースをとりあげたい。本記事では、シンガポール在住のアレックスが取材に応じてくれた。
8月のある日、アレックスは友人から送られてきたメッセージをみて、思わず鳥肌がたったという。
「377Aがなくなるって!」
すぐに首相演説をチェックした。どうやら友人が言っていたのは本当のことらしい。377Aとは、シンガポールのLGBTコミュニティにとって長年の課題となってきた刑法の条文である。
刑法377A条は男性同士によるわいせつ行為やあっせんを2年までの禁錮に処すると定めたものだ。1930年代の英国植民地時代に導入されて、2022年の今日までずっと存在してきた。
以前は実際に処罰された人もいたようだが、少なくともこの数十年もの間に罰せられた人はいない。この古い法律は、とっくに役目を終えていた。
それでもLGBTQコミュニティにとって不安をもたらす規定だったことには変わりない。また、刑法があることで性感染症について啓発をする際にも、同性と性的接触を行う人たちには正しい情報を届けられないなど障壁となってきた。子どもたちは学校で、性の多様性について肯定的な情報を得る代わりに、同意のある性行為でも犯罪になることを学んだ。当事者の子どもが自己肯定感を育む教育からは、ほど遠い。
シンガポールで暮らす、性自認が男女のどちらにもあてはまらない「ノンバイナリー」のアレックスがマッチングアプリにログインしようとすると、簡単な警告が表示される。
「あなたのエリアでは法律で規制がされるおそれがあります」
その恋は大丈夫?と、アプリが心配をしてくれるのだ。
ただ友人からの吉報によれば、そんな警告が無くなる日が、近い将来訪れるかもしれないのだった。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください