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スケート界の「女帝」トゥトベリーゼコーチの訪米が話題になった理由

ロシアの国際競技への締め出しが続く中で

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 今年2月、2022年北京オリンピックが終了し、次のオリンピックに向けてフィギュアスケートの新たな4シーズンが始まった。

 だがオリンピック後に始まったロシアのウクライナへの侵略戦争が長引いている現在、今季もISU(国際スケート連盟)はロシアとベラルーシの国際競技からの締め出しを継続。この侵略戦争が終わらない限り、スケート大国ロシアは国際競技に戻ってこられないだろう。

 そんな中でいくつか、スケート関係者たちの間で注目されている動きがある。

アメリカ国籍を持つトゥトベリーゼの娘

Bukharev Oleg/Shutterstock.com2018年平昌オリンピックの女子シングルで金メダルを獲得したアリーナ・ザギトワ(左)とエテリ・トゥトベリーゼコーチ Bukharev Oleg/Shutterstock.com

 その一つは2018年平昌オリンピック金メダリストのアリーナ・ザギトワ、北京オリンピック金メダリストのアンナ・シェルバコワをはじめとする多くの女子チャンピオンを育ててきたエテリ・トゥトベリーゼコーチの動向だ。

 「女帝」とも呼ばれたトゥトベリーゼには、ダイアナ・デイビスというアイスダンサーの娘がいる。デイビスはトゥトベリーゼがアメリカでコーチとして活動していた2003年に生まれ、ロシアとアメリカの両国籍を有している。パートナーのグレブ・スモルキンと北京オリンピックのロシア代表に食い込み、14位という結果だった。

Asatur Yesayantsshutterstockトゥトベリーゼコーチの娘、ダイアナ・デイビス(左)とグレブ・スモルキン Asatur Yesayants/Shutterstock.com

 デイビス&スモルキンは2020年からアメリカのミシガン州で、ロシア出身の著名なアイスダンスコーチ、イゴーリ・シェピルバンドに師事してきた。だが今季から、バージニア州のリンクに拠点を移し、昨シーズン(2022)の四大陸チャンピオン、キャロライン・グリーン&マイケル・パーソンズを育てたやはりロシア系のコーチ、アレクセイ・キリアコフとエレナ・ノヴァックの元に移った。

 そのデイビスのコーチ変更のためもあったのか、母親のトゥトベリーゼがこの春、米国の複数のリンクに姿を現したことがスケート関係者たちの間で大きな話題になった。

 ロシアの国際大会出場禁止が始まった直後から、スケート関係者の間では、デイビスはアメリカ代表として滑る準備を進めていると囁かれてきた。そして春にパートナーのスモルキンと突然入籍したことが、その噂に拍車をかけた。オリンピックを狙うのなら、スモルキンもアメリカ国籍取得が必須だからだ。

 さらにトゥトベリーゼ本人も、アメリカでコーチとしての活動の場を探しているという噂を複数の方面から耳にした。この春に彼女は、アメリカ国内で活動するロシア系コーチたちのつてを頼り、ボストン、フロリダなどいくつかのリンクに姿を現していた。

エテリ・トゥトベリーゼ・コーチエテリ・トゥトベリーゼ(ロシア)は、数々のメダリストを育て、フィギュアスケート界では最も有名なコーチの一人だ

 「鉄の女」という綽名もあるトゥトベリーゼは、普段はほとんど笑顔を見せることはない。プレス関係者にはもちろん、ジャッジやオフィシャルたちにすら不愛想な態度を隠さないという。だがアメリカのリンクに現れた彼女は

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