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日本の「国葬」儀のとんでもない「間の悪さ」は何のバチなのだろうか

北丸雄二  ジャーナリスト、コラムニスト

 何から何まで間が悪いのだ。

 事件が7月8日。岸田首相が記者会見で「国葬」を表明したのが6日後の同月14日。閣議決定は同22日。ここまでは事件の余波で世間が国葬の是非をうまく咀嚼できる前の、自民党副総裁麻生太郎の「理屈じゃねえんだよ」のプッシュが象徴する急ぎよう。しかしそこから実施までは2カ月以上の間が空いた。

 記者発表直後にNHKが実施した世論調査では「国葬」方針に賛成(評価する)が49%で、反対(評価しない)は38%。山上徹也容疑者の旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への深い私怨が報じられ、元首相との関連も取り沙汰され始めてはいたが、事件はなおも悲劇として追悼気運はまだあった。

 死去から10日後の英国エリザベス女王の国葬のように、あるいは死後11日で行われた1962年の吉田茂元首相の国葬のように、ほぼ間髪おかずにやれていればどうだったか?

 事件から2カ月が過ぎた9月に入ってからの各社の世論調査では、国葬に対し、朝日は賛成38%ー反対56%▼毎日は同27%ー62%▼時事は同25.3%ー51.9%▼共同は同38.5%ー60.8%▼日経は評価する37%ー評価しない60%▼NHKは同32%ー57%、と反対意見が軒並みダブルスコアほどに凌駕した。何とも間が悪い。

 反対はまずは今回の「国葬」儀の法的根拠のなさへの申し立てだった。同じく法的支えに欠けた吉田国葬は、日本の「戦後」独立回復の立役者として、戦前の「国葬」を知る旧世代のいた、まだ「戦後」22年目に行われた。それでも当時の首相の佐藤栄作は、共同通信によると「法的根拠のない国葬を超法規的措置で実施するには、野党の了解が必要だから、野党第1党の社会党を説得しろ」(東京新聞2022年9月5日朝刊)と外遊先から自民党幹部に電話し、共産党以外の野党が反対しないことを確認した上で、死後3日で国葬を閣議決定した。

安倍元首相の国葬反対を訴えるデモ行進は全国でおこなわれている=2022年9月19日、東京都渋谷区

拡大安倍元首相の国葬反対を訴えるデモは全国各地でおこなわれている=2022年9月19日、東京都渋谷区

 対して今回は、野党にも国会にも何も諮らない「理屈じゃねえ」決定だった。そしてそれを自民党元幹事長の二階俊博が「黙って手を合わせて見送ってあげたらいい。こんなときに議論すべきじゃない」「終わったら、反対していた人たちも必ずよかったと思うはず。日本人ならね」と“援護”して反対論の火に油を注いだ。

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筆者

北丸雄二

北丸雄二(きたまる・ゆうじ)  ジャーナリスト、コラムニスト

毎日新聞、東京新聞(中日新聞)社会部から同ニューヨーク支局長を経て1996年に退社し在ニューヨークのまま執筆活動。2018年帰国。著書『愛と差別と友情とLGBTQ+──言葉で闘うアメリカの記録と内在する私たちの正体』 (人々舎)で「紀伊國屋じんぶん大賞2022」2位受賞。訳書に『LGBTヒストリーブック──絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』(ジェローム・ポーレン著、サウザンブックス社)、絵本『ぼくらのサブウェイ・ベイビー』(ピーター・マキューリオ作、レオ・エスピノーサ絵、同社)など多数

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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