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最後の4回転「4アクセル」に成功したイリア・マリニンとは何者なのか?

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

マリニンが4回転アクセルに挑戦した理由

史上初めて試合で4アクセルに成功したイリア・マリニン(アメリカ)。まだ17歳拡大史上初めて国際スケート連盟(ISU)公認大会で4アクセル(4回転半ジャンプ)に成功したイリア・マリニン(アメリカ)。まだ17歳

 現在17歳のマリニンは、米国内ではノーヴィス(ジュニアの下のクラス)の頃から注目されていた。だが怪我とパンデミックが重なり、本格的にスポットライトを浴びたのは2022年1月にテネシー州ナッシュビルで開催された、北京オリンピックの代表選考を兼ねた全米選手権でのことだった。

 シニアとして初挑戦したマリニンは、母親譲りなのかルッツが得意で、安定した4回転ルッツを跳び、フリーでは他にサルコウ、トウループの3種類の4回転を合計4本成功させた。SP、フリーともノーミスで滑り切り、優勝したネイサン・チェンに次いでサプライズの銀メダルを手にしたのである。

 「自分は北京オリンピックに行く資格があると思うか?」とフリー後の会見で聞かれて、「はい、それに相応しい実力があることを証明できたと思う」と答えた。

 だがUSFS(米国フィギュアスケート連盟)はまだ国際大会ではジュニアレベルで競っていたマリニンを選ばず、3位のヴィンセント・ジョーと4位のジェイソン・ブラウンのベテラン勢をネイサン・チェンと共に北京オリンピックに送った。

 3月には自身初のシニア世界選手権となった仏モンペリエ世界選手権に出場。SPで4位と好調なスタートをきったものの、フリーではミスが出て11位、総合9位という結果だった。その後、予定より遅れて4月にエストニアのタリンで開催された世界ジュニア選手権で優勝し、タイトルを手にした。

 自らのインスタグラム名は「クワッドゴッド」(4回転の神様)。全米選手権で記者に聞かれると、マリニンは「そういう存在になれたらいいな、という願望です」と照れながら答えた。

米ニューヨーク州レイクプラシッドで開催されていたチャレンジャーシリーズ、USクラシック・インターナショナル拡大4アクセルを成功させたUSクラシック・インターナショナルで=2022年9月14日、米ニューヨーク州レイクプラシッド、撮影・筆者

 そのクワッドゴッドは今年の春に、4アクセルを練習中に片足で着氷したビデオを公表して話題になっていた。

 彼は、おそらくこの初戦のUSクラシック・インターナショナルで4アクセルを試すだろうという予感があった。その理由はまず、

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筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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