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見えない「制度的差別」と「文化的差別」をどう乗り越えるか

本当の障害者雇用の姿とは~大学の場合

三谷雅純 大学教員、霊長類学・人類学の研究者、障害当事者

 脳塞栓(そくせん)症の後遺症で障害を抱えつつ、人類学研究にとりくむ三谷雅純さんの連載「〈障害者〉と創る未来の景色」の3回目です。「様々な社会課題に直面している当事者や、課題解決にとりくんでいる人たちの論をご紹介したい」と呼びかけたところ、三谷さんが名乗り出てくださいました。
 三谷さんの連載の感想や自分の体験を伝えたい、私も当事者として論じたいという方がいらっしゃいましたら、メールでinfo-ronza@asahi.comまでその感想や体験、論考をお送りいただければ幸いです。一部だけになりますが、論座でご紹介したいと思います。

(論座編集部)

 前回の「なぜ障害のある教員は少ないのか?~研修に携わった経験から」で報告したように、障害のある子どもにどう接するべきかという研修を、教員は熱心に聞いてくれました。しかし、その一方で教員仲間に障害者は増えないという事実があります。これは教員という職業が持つ「優越的な立場の暗黙の誇示」、つまりパターナリズム(父権主義)が関係しているような気がするのです。

障害者が就労しにくい教員という仕事

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 「教育委員会における障害者雇用に関する実態調査」(2019、「別添資料1」の1ページ参照)が明らかにしたことは、大学を除く教育委員会関連の事業体では、事務職員にばかり障害者雇用の「負担を押しつけ」、教育職員には自分たちの仲間として障害者を迎え入れる気風が乏しいという現実でした。このことは高校までの教職員にだけ言えることではありません。同じことは大学の教職員にも言えることです。

 一部の国立大学と公立大学の障害者雇用は厚生労働省が各都道府県に置いている労働局が公開している「障害者雇用状況の集計結果」(最近の例を挙げれば、東京労働局大阪労働局兵庫労働局。各資料の最終ページ参照)に載っています。また国立大学法人やその他の国立機関の集計は厚生労働省が公表している「障害者雇用状況の集計結果」(2021年の集計結果。31~34ページ参照)に載っています。

 このように障害者雇用率は公開されていますが、各大学の事務職員と教育職員の割合まではわかりません。これはひじょうに残念なことです。なぜなら人を育てる立場の大学教員こそ、障害者が活躍できる職種でなければならないからです。日常的に学生と接する教員は、障害のある学生のロール・モデルになりうるのです。高校までのような事務職員と教育職員の割合にかたよりがあったのでは、大学でも障害教員は本領を発揮できません。

 なぜ障害者雇用には、このように極端な偏りがあるのでしょうか。前回わたしは、教育機関には障害者雇用にかんして「除外率制度」が生きており、教職員はその「除外率制度」の適用を受けていると指摘しました。法律上は将来的に廃止すると言いながらも、現在はまだ「障害者を一定の割合で雇用しなくてもよい」という制度が残されています。つまり障害者雇用に関して「ゲタを履かせてもらっている」わけです。教育機関の除外率は、例えば大学などでは30 %です。特殊支援学校は45 %、小学校で55 %、幼稚園は60 %でした。幼稚園や小学校、特別支援学校、大学の教員は、それだけ障害者が就労しにくい職種になっています。

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筆者

三谷雅純

三谷雅純(みたに・まさずみ) 大学教員、霊長類学・人類学の研究者、障害当事者

化石に残らないヒトの行動を探る科学に強い興味を持っています。カメルーンやコンゴ共和国を中心に、屋久島やインドネシアなどの森で調査を行ってきました。2002年4月に脳塞栓症に陥り、後遺症のため、現在2級の重度障害者。隙があれば今でもアフリカや東南アジアに行く機会を探しています。著書は『ンドキの森』(どうぶつ社)、『ヒトは人のはじまり』(毎日新聞社)、『〈障害者〉として社会に参加する』(春風社)など多数。【note】 https://note.com/gorilla0907/ 【researchmap】 https://researchmap.jp/read0189214

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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