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「相手の同意を得なかった性交」を構成要件とすべきだ~刑法改正試案をめぐって

裏づけ証拠を提出すべきは被告人である

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

 刑法の性犯罪条項見直しに関わる、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会の試案が提出された。後述するように、親等の「監護者」に関わる特別な条文を設ける等の改善を図った2017年の刑法改定に比べて、前進した部分もあるが、本質的な点で被害者・支援者の期待を裏切ったと判断される。

性暴力被害の実態に沿った刑法改正を求め、法務省前に集まった「フラワーデモ」の参加者=2021年3月8日午後、東京都千代田区拡大性暴力被害の実態に沿った刑法改正を求める「フラワーデモ」は全国各地でおこなわれるようになった=2021年3月8日、東京都千代田区

若干の前進

 強かん罪の適用が配偶者間に広げられたこと(試案5p)、撮影罪(盗撮罪)が提案されたことは、評価できる(同10p)。後者について言えば、近年検挙件数は増加しており、10年で2倍以上になったという(2022年8月2日付東京新聞)。従来、盗撮への対処は自治体まかせだったが、試案どおりに刑法が改定されれば実質的な盗撮禁止法となる(論座「「男女共用トイレ」と盗撮について、反論に応える」)。

 子どもの被害者に対するいわゆる「司法面接」の証拠化も評価できる(試案8-9p)。ただし大人についても司法面接に準ずる面接を証拠化する体制を、作るべきではないか。性犯罪被害者は、総じて警察に出頭することに強い抵抗感を示す。だが、そうした面接法を開発・採用し、実質的に警察での事情聴取や証拠保全と同様の効果をもちうる、各種機関の連携的な相談・事後対応体制を作る努力はできるはずだ。

 13歳を「性交同意年齢」とする規定をすえおいたのは失態だが、13歳以上16歳未満について一定の配慮をした点はひとまず評価できる(同3p)。ただし、5歳以上の年齢差がある者の行為しか性犯罪と見なさないのは、その年齢層の行動様式を知らない者の発想である。10代では「長幼の序」の規範が極端な形で働き、たった1年の違いが想像以上の力関係につながる。試案はその点への配慮を欠いている。

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筆者

杉田聡

杉田聡(すぎた・さとし) 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

1953年生まれ。帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)。著書に、『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『逃げられない性犯罪被害者——無謀な最高裁判決』(編著、青弓社)、『レイプの政治学——レイプ神話と「性=人格原則」』(明石書店)、『AV神話——アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店)、『男権主義的セクシュアリティ——ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店)、『天は人の下に人を造る——「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『カント哲学と現代——疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』(行路社)、『「3・11」後の技術と人間——技術的理性への問い』(世界思想社)、『「買い物難民」をなくせ!——消える商店街、孤立する高齢者』(中公新書ラクレ)、など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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