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障害者に研究はできないと誰が決めるのか?

当事者の立場で「さまざまな視点」からの学問を考える

三谷雅純 大学教員、霊長類学・人類学の研究者、障害当事者

 脳塞栓(そくせん)症の後遺症で障害を抱えつつ、人類学研究にとりくむ三谷雅純さんの連載「〈障害者〉と創る未来の景色」の4回目です。「様々な社会課題に直面している当事者や、課題解決にとりくんでいる人たちの論をご紹介したい」と呼びかけたところ、三谷さんが名乗り出てくださいました。
 三谷さんの連載の感想や自分の体験を伝えたい、私も当事者として論じたいという方がいらっしゃいましたら、メールでinfo-ronza@asahi.comまでその感想や体験、論考をお送りいただければ幸いです。一部だけになりますが、論座でご紹介したいと思います。

(論座編集部)

あなたも論の座に

 2022年10月12日付の記事「見えない『制度的差別』と『文化的差別』」で、わたしは「教育施設では『制度的差別』や『文化的差別』が障害者雇用を阻む障壁ならば、我われ障害者は、覚悟を持って自分たちの見てきたこと、経験してきたことを言葉にして、主張し続けなければなりません」と書きました。まさにこれに応えたかのようなシンポジウムが、3月に開催されています。

ポスター日本学術会議のHPから

 日本学術会議の公開シンポジウム「生命科学分野におけるジェンダー・ダイバーシティ」の3回目に「Disability Inclusive Academia:障害のある人々の視点は科学をどう変えるか」が2022年3月23日に開かれています。この公開シンポジウムのことです。このシンポジウムの全体は、今でも動画でも公開されています。

 このシンポジウムに、わたしはオン・ラインで参加しました。当事者として研究者の立場から障害を論じたシンポジウムを、わたしは他に知りません。わたしが参加する機会の多い「福祉のまちづくり学会」や「交通エコロジー・モビリティ財団」の研究会には障害のある研究者がよく発表していますが、研究内容は、当事者から見て社会のここを、こう変えると障害者も非障害者もこんなふうに便利になりますよ、ほらね、といったものです。「Disability Inclusive Academia:障害のある人々の視点は科学をどう変えるか」のような、障害のある研究者が参加すると科学はこんなふうになりますよ、という発表は初めてでした。

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