2022年11月11日
ロシアによるウクライナ軍事侵略の終結の兆しが見えない中、今シーズンのフィギュアスケートGP(グランプリ)シリーズはロシアとベラルーシの代表選手が不在のまま開幕した。
ロシアスケート連盟は、GPシリーズと同じスケジュールでロシア国内シリーズを開催している。SNSやタス通信などを通して、ロシアの選手や関係者の動向はある程度伝わってくるものの、実際の現地の状況はどのようになっているのだろうか。
筆者がGP大会取材中に行き当たったロシア出身、北米在住のあるスケート関係者Xさんは、匿名を条件に取材に応じた。本人の身の安全のため、性別、取材地も非公開とさせてもらう。
Xさんはこう語った。
「今のロシアは、プーチンのウクライナ侵略戦争に反対する人間にとって、とても危険な場所になりました。信じられないほどの量の、巧妙に作られたプロパガンダがテレビで流され、国中にあふれかえっているのです」
プーチンに投票してきたロシア国民の自己責任、という意見もあるが、もちろん全ての国民がプーチンの侵略戦争を支持しているわけではない。だが反戦の声をあげただけで、明日の身の安全すらも保障されないのがロシアの現状なのだという。
「ロシア国内では、政府のプロパガンダ以外の情報を拡散しようとした人物は、次々と投獄、あるいは殺害されているのです」
スケート関係者の中でも侵攻開始当時、2014年ソチオリンピックペア王者のマキシム・トランコフや、2018年平昌オリンピック女子シングル銀メダリスト、エフゲニア・メドベデワなどのようにSNSを通して平和を訴えていた人々はいた。だがそれらの投稿は早いうちに削除され、彼らは現在沈黙を守ったままである。
そんな中でも際立っているのは、2006年トリノオリンピックの男子シングル金メダリスト、エフゲニー・プルシェンコのたび重なるプーチン擁護の発言だ。Xさんは、こう言葉を重ねた。
侵略戦争が始まってすでに9か月が経過し、スケーターにも部分的動員令が届いたことはニュースになった。その多くは今のところ実際の徴兵は免れているが、Xさんによると、すでに戦地に送られた者もいるという。「ユリア・リプニツカヤの夫は元スケーターですが、すでに前線に送られました」。二人の間には、2歳の娘がいる。
2020年欧州王者のドミトリ・アリエフ、2019年ネーベルホルン杯チャンピオンのマカール・イグナトフらにも令状が届いたと報道された。「彼らに関しては、アントン・シハルリーゼが必死で働きかけて免除されました」。
シハルリーゼは2002年ソルトレイクシティオリンピックのペアチャンピオンで、2007年に政界入りした。現在、ロシア連邦議会の体育スポーツ委員会委員長を務める。その彼が、後輩を救うために奔走したのだという。
「プーチンは負けると、私は思います。でも
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