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見て、知って、楽しむ 福井のミュージアムツーリズム(下)一乗谷朝倉氏遺跡博物館

【19】本物に出合う! “地味にすごい、福井”の博物館

沓掛博光 旅行ジャーナリスト

 福井県内に点在する本物と出合える博物館を巡るミュージアムツーリズム。(上)編では福井県の魅力発信のブランドにもなった福井県立恐竜博物館と年代特定の世界的なものさしと言われる水月湖の年縞を展示する福井年縞博物館を取り上げた。(下)編ではこの10月にオープンした福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館を紹介。この時期に訪れて楽しめる福井県の味覚もご案内しよう。

朝倉氏の遺跡の上に立つ一乗谷朝倉氏遺跡博物館

 福井市内を流れる足羽川に沿って中心部から上流へおよそ10キロ、ここからさらに支流の一乗谷川を3キロ弱ほどさかのぼると越前(現在の福井県)一帯を支配した戦国大名、朝倉氏の遺跡に着く。筆者が初めてこの地を訪れたのはかれこれ25年ほど前。川に沿って伸びる県道の両脇には礎石が整然と並ぶ遺構が一面に広がり、その背後に続くゆるやかな山並みと一体となって、ここだけは時が止まったような異次元の世界に思われた。

 屋敷跡を伝える礎石のひとつひとつ、隣家との境を示す土塁跡などなど。まさしく戦国武将の栄枯盛衰を語っているよう。現在は国の特別史跡、特別名勝、重要文化財の3重の指定を受け、いわば重厚、重層な史跡である。その詳細は後述するとしてまずは、この一乗谷の入り口近くに10月1日にオープンした福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館から紹介しよう。

 約450年前の戦国の世を現在に移し、礎石に囲まれた遺構に息吹を吹き込んで1470年台初頭から5代、約100年続いた越前朝倉家とその城下に暮らした人々の出土品や復元した屋敷などを展示、解説している。

拡大10月1日にオープンした福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館では、長さ38メートル幅5.6メートルの石敷きの遺跡をそのまま展示している(筆者撮影)

 博物館の面積は約1万平方メートル。濃いグレーを基調にした外観は、かつての朝倉氏の出城と山城をモチーフにし、周囲に広がる水田とは対照的なモダン造り。館内は1階と2階からなり、1階には朝倉氏の遺跡を映像で解説するガイダンスルームがあり、その先に博物館の一つの目玉とも言える遺構展示室がある。

 ドアを開け、室内に入ると足元に無数の石を一面に敷いた光景が目に入ってくる。一見すると川原の一部のようにも思える。博物館の解説によるとこの石敷きについては、朝倉氏が栄華を誇っていた頃の舟運のための船着き場の跡ではないかという説や近くに経堂跡が見つかっていることから、そこへ通じる道の跡ではないかという説などが推測されるという。石は少し盛り上がって帯状になって敷かれ、川原に自然に残った石とは確かに違う、人の手が加えられたように見える。いずれにしても450年ほど前の遺跡がそのまま露出した状態で目の当たりにすることができるのはこの博物館ならではの魅力であり、迫力ある展示と言える。

 石敷きがこうして一般に公開されるようになるまでには多少の紆余曲折があったようだ。そもそもこの石敷きは建設前の調査で初めて発見されたもので、建築計画の段階ではこのあたりの河川の氾濫や土地改良の記録などから遺構は既に失われていると考えられていた。それ故に建設地に選ばれたという経緯がある。ところが実際に調査をしてみると地下に石敷きが姿を現したのである。

 発見の報に「ここでの建設は無理か」との思いが一瞬頭をよぎったと福井県交流文化部文化課の三武紀子課長は言う。事実、専門の研究者からは、新しい建物を建てた場合、発見された石敷きに影響を与えるとの指摘があり、建設に反対する動きもあったという。しかし、「現地に行かなければ見られない本物があるからこそ価値がある」(三武紀子課長)との認識のもと、これを生かす方策を専門家と交えて検討し、柱のない約1000平方メートルの空間に遺構をまるごと露出して展示することにしたのである。

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筆者

沓掛博光

沓掛博光(くつかけ・ひろみつ) 旅行ジャーナリスト

1946年 東京生まれ。早稲田大学卒。旅行読売出版社で月刊誌「旅行読売」の企画・取材・執筆にたずさわり、国内外を巡る。1981年 には、「魅力のコートダジュール」で、フランス政府観光局よりフランス・ルポルタージュ賞受賞。情報版編集長、取締役編集部長兼月刊「旅行読売」編集長などを歴任し、2006年に退任。07年3月まで旅行読売出版社編集顧問。1996年より2016年2月までTBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」旅キャスター。16年4月よりTBSラジオ「コンシェルジュ沓掛博光の旅しま専科」パーソナリィティ―に就任。19年2月より東京FM「ブルーオーシャン」で「しなの旅」旅キャスター。著書に「観光福祉論」(ミネルヴァ書房)など

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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