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東京都が上映中止した作品は、企画展の趣旨「精神障害者の人権」に反しているのか?

戦前の朝鮮人患者などを取り上げた飯山由貴さんの映像作品

植松青児 エディター・ライター

 東京都の外郭団体・(公財)東京都人権啓発センターが美術家の飯山由貴さんに依頼した人権に関する企画展「あなたの本当の家を探しにいく」で、飯山さんが上映を希望した映像作品『In-Mates』を、都の人権部が上映不可とした問題は、朝日新聞が11月2日社説で取り上げるなど、大きな波紋を呼んでいる。

 とりわけ、上映不可決定の直前(5月12日)に、都人権部から啓発センター側に送られたメールの内容に対し、批判が集まっている。そのメールには、『In-Mates』の中で出演者の歴史学者・外村大さん(東京大学教授)が「関東大震災時の朝鮮人虐殺事件が事実である」旨を発言していることについての「懸念」や、「在日朝鮮人は日本で生きづらいという面が強調されている」ことへの「懸念」が表明されていたからだ。このメールの内容は、東京都人権部の歴史認識や人権意識に対する強い疑念を生んだ。

 これに対し、都人権部の川上秀一・人権担当理事は朝日新聞の取材(10月28日)などに対し「(メールの)表現が稚拙で工夫すべき所があった。都知事のことを出したのは必要のない表現だった」とも述べたものの、上映不可の理由は「企画展の趣旨に沿わなかった」だと述べ、小池都知事への忖度を否定している。小池百合子都知事も10月28日の記者会見で「今回は精神障害者の人権がテーマ。事業の趣旨に合わないということで、上映しない判断に至ったと聞いている」と説明した。

 これらの発言からは、小池都知事への忖度はなかった、『In-Mates』が企画展の趣旨に沿っていなかったから上映不可にしただけのことだとして、この問題の幕引きを計りたい姿勢が見て取れる。

 しかし実際の作品を見る限り、『In-Mates』が「企画展の趣旨に沿っていない」作品だとする都人権部の見解は、説得力を欠くといわざるを得ない。

東京都の対応に抗議する美術家の飯山由貴さん(中央)ら拡大東京都の対応に抗議する美術家の飯山由貴さん(中央)ら=2022年10月28日、 東京・霞が関

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筆者

植松青児

植松青児(うえまつ・せいじ) エディター・ライター

1960年生まれ。雑誌デザイナー、TV局のテロップ校正、百貨店勤務等を経て2018年より週刊「金曜日」編集部。「金曜日」表紙デザインも担当。執筆記事に「アジアの人々と『ノーモア・ヒロシマ』は共有可能か〜沼田鈴子さんの実践に学ぶ」(『金曜日』2019年7月31日号)、「『社会史・労働史』が欠落している産業遺産情報センター展示」(http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2020/11/05/news-82/)ほか。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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