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賠償金を払わない「論破王」ひろゆき氏の法の抜け道を使ったトンデモな理屈

Qアノンと日本発の匿名掲示板カルチャー【8】

清義明 ルポライター

大学のサークル誌に載った仰天のレポート

 さらに、あたかも「言論の自由」という主義・主張のために西村氏が賠償金を支払わなかったという解釈も、私には極めて疑問である。

 私の手元に『朔風』と題された小冊子がある。発行元は「犯罪科学研究会」。中央大学のサークルである。この1996年度発行号に、H.Nという筆者が書いた『交通違反について』というレポートがある。このH.Nとは西村博之氏のことである。

拡大H.Nという筆者が書いた『交通違反について』というレポート

 どういうことが書いてあるかといえば、交通違反の罰金をいかにして踏み倒したのか、その体験談である。それを現場の違反状況の手書きの情況図をはさみながら、たんたんとレポートしている。

 「交通違反の取り締まりをうけて納得がいかず罰金を払った人に、このような選択肢があると提言するものである」と書かれている。ここで西村氏がいう「選択肢」とは、ようするに、どんなことがあっても、違反を認めなければ、小さな事件なので警察も音を上げて諦め、結局不問になるというものである。

 警察に現行犯で捕まっても、出頭命令はくるが、それを無視してみたが何もなかった。法律のとおり行動したら、罰金も減点もなかった、ということである。身もふたもない話だが、もちろんこの「選択肢」は、その数年後に2ちゃんねる裁判で本人によって実践されたわけである。

 当時、サークルに在籍した人に聞くと、西村氏は「犯罪科学研究会」のサークルでは経理を担当していたらしいが、あまりにも仕事が杜撰(ずさん)で、それを先輩に咎(とが)められると、それからは姿を現さなくなったとのこと。さもありなんの話である。

「交通違反のもみ消し方」から生まれた2ちゃんねる

 西村氏が2ちゃんねるを開設するにあたり、そのプロトタイプになったのは、「交通違反のもみ消し方」というサイトである。これは、中央大学犯罪科学研究会のレポートを、そのまま掲載し、さらに罰金の逃げ切り方のノウハウ情報を交換しあう読者用の掲示板をつけたものだった。

 当時のネットはアングラ情報がある場所というイメージがあったし、それを皆目当てにしてアクセスしていた。もう、おわかりだろう。この交通違反の罰金をもみ消すための情報交換掲示板が、2ちゃんねるのプロトタイプなのである。

 ある日、この掲示板に西村氏本人が「もうちょっと違う掲示板をつくってみるつもり」というようなことを書いて、しばらくその掲示板からは西村氏の書き込みが途絶えた。そして、西村氏が米留学中の時間を利用して出来たのが、個人サイト「交通違反のもみ消し方」から独立してできた2ちゃんねるである。

 もともと、交通違反をどのようにもみ消すかから始まったのが2ちゃんねるだったのである。そして、法律をかいくぐりながら、法的責任を逃げるという方法は、西村氏本人によって引き継がれたというわけだ。

 「例えば、損害賠償400万円欲しいって人だったら、僕が400万円払わなければならないっていう判決とか命令が出るんです。
 で、それも放置したらどうなるかっていうのをやってみたら、別に何も起きないんですよね。結局、判決が400万円だとすると、僕から400万円を取る権利が確定するんですけど、権利が確定しただけで、その取り立ては国はやってくれないんですね。
 じゃあ僕が仮に400万円持っているとします。どうやってお金をとるか? 会社員だったら会社に対して給料差し押さえとかできるんですよ。じゃあ会社員じゃなかったらどうやってお金とるんですか?ってどんな弁護士に言っても、答えがないんですよね。こういうことがあって、あ、デメリットないじゃんと(笑)」

 後年の西村氏の発言である。なんのことはない。相手から逃げ切れば責任は逃れられるという、中央大学の学生のアングラなレポートをそのまま実践し、スケールを大きくしただけである。

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筆者

清義明

清義明(せい・よしあき) ルポライター

1967年生まれ。株式会社オン・ザ・コーナー代表取締役CEO。著書『サッカーと愛国』(イースト・プレス)でミズノスポーツライター賞優秀賞、サッカー本大賞優秀作品受賞。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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