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苦境に陥った2ちゃんねるのひろゆき氏に手を差し伸べた「FOX」という男

Qアノンと日本発の匿名掲示板カルチャー【9】

清義明 ルポライター

 この連載「Qアノンと日本発の匿名掲示板カルチャー」では、第1回「西村博之とジム・ワトキンスの2ちゃんねる骨肉の争い/上」と第2回「西村博之とジム・ワトキンスの2ちゃんねる骨肉の争い/下」で、西村博之(ひろゆき)氏が敗北したジム・ワトキンス氏との裁判、通称「2ちゃんねる乗っ取り裁判」について書いたが、実は両氏には、最高裁で決着がついたこの裁判とは別にもうひとつ争っている裁判がある。その裁判にはこの二人の関係を極めてよく知る人物が登場する。

 2ちゃんねると西村氏を考えるうえで、重要な証人になるであろうこの人物に会うため、私は北海道に飛んだ。

 その男の名前は、「FOX」という。

★連載「 Qアノンと日本発の匿名掲示板カルチャー」のこれまでの記事は「こらら」からお読みいただけます。

拡大Qアノンの関連イベントで参加者と話す映画監督のカレン・ホーバック氏=2021年10月23日、米ラスベガス

ドキュメンタリー番組『Qアノンの正体』

 Qアノンの出自を明らかにするために、札幌は外すことができない。Qアノンの正体は何かを探る米国のビデオ・オン・デマンド・サービス「HBO MAX」のドキュメンタリー番組『Qアノンの正体 / Q: INTO THE STORM』(カレン・ホーバック監督)は、日本でも放送されて話題を呼んだが、ここでもやはり札幌が重要な舞台になっている。

 このドキュメンタリーによれば、Qアノンとは、すでに触れてきたジム・ワトキンス氏の息子であるロン・ワトキンス氏ではないかということだ。札幌からマニラ、そしてアメリカと追いかけ、最終的にはアメリカ連邦議事堂のあの襲撃事件の現場にたどりつくという流れになっている。それは、これまでの本連載で書いてきたとおりである。

 カレン・ホーバック氏は、ロン・ワトキンス氏、日本の2ちゃんねるの影響を強く受け、その関係者によって運営されている匿名掲示板8kun(8chan)に密着取材し、情況証拠を積み上げていく。最終的には、ロン氏の不用意なひとことが決め手になって、ロン氏がQアノンの匿名投稿者である「名無しのQ(Q Anoymous)」ではないかと思わせる結末となっている。

 ただ、私は個人的にはロン・ワトキンス=「名無しのQ」説には賛成し切れないところがある。この「ロン・ワトキンス犯人説」は、朝日新聞の藤原学思記者も『Qを追う 陰謀論集団の正体』(朝日新聞出版)で踏襲しているが、本当にそうなのだろうか。

 仮にロン氏が「名無しのQ」であったとしても、私は、このQアノン現象の本質は、ロン氏が「名無しのQ」なのかという犯人探しのようなところとは別のところにあるのではないかとも思っている。これについては後々に触れていこう。

ロン・ワトキンス氏が札幌に住んでいたワケ

 ドキュメンタリーに話を戻す。

 これを見て不思議なのは、ロン・ワトキンス氏がどうして札幌に在住しているのかということが、ほとんど説明されていない点だ。

 なぜロン・ワトキンス氏が札幌にいるのか、答えは簡単である。2ちゃんねるは、開設以来、そして西村氏が保有する商標権の問題で「5ちゃんねる」と改名された現在も、実質的に札幌で運営されていたからである。

 私は札幌を訪ねて、ドキュメンタリーで取り上げられた場所をひとつひとつ確認していった。ロン・ワトキンス氏の札幌郊外の自宅も何度か訪ねてみた。玄関のチャイムを押してみるが、反応はない。日をあらためて何度か行ってみたが、同様だった。庭には、犬が一匹いた。ということは、誰かが住んでいるのは間違いないのにも関わらずである。

 その半年後に、毎日新聞が接触に成功しているが、コメントは得られなかったようだ(参照)。

 ロン氏が札幌にいるのは、2ちゃんねる(現「5ちゃんねる」)のビジネスを監視するためだと、フィリピンのマニラでワトキンス親子と共に匿名掲示板8kunを運営していたフレデリック・ブレンナン氏は証言する。「日本人は信用できない」と公言していたジム氏が、マニラを拠点とする自身の代わりに送り込んだのが、ロン氏だということだ。

拡大Qアノン関連のイベントで演説するロン・ワトキンス氏=2021年10月23日、米ラスベガス

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筆者

清義明

清義明(せい・よしあき) ルポライター

1967年生まれ。株式会社オン・ザ・コーナー代表取締役CEO。著書『サッカーと愛国』(イースト・プレス)でミズノスポーツライター賞優秀賞、サッカー本大賞優秀作品受賞。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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