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取材対象からの独立という報道倫理に反した東京五輪スポンサー新聞社〈最終回〉

組織委と利害を共有したことで、招致疑惑の実名報道に及び腰に

小田光康 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

疑わしきを白日にさらしたBCCI事件、パナマ文書報道

 一般に同一案件で出稿数とニュース価値は正比例する。ここで五輪招致疑惑、BCCI事件とパナマ文書事件のこれら3件の疑惑・事件についてのニュース価値の内容を考えてみたい。

 ジャーナリズム界で世界的な評価を得ているピューリッツアー賞を授賞する米コロンビア大ジャーナリズム大学院のメルビン・メンチャー教授が示したニュース価値を見てみよう。ニュース価値を高める要因には、

  1. 新しさを示す「時間性」
  2. 社会への影響度を示す「インパクト性」
  3. 取材対象の社会での認知度を示す「著名性」
  4. 情報需要者との物理的あるいは心理的距離を示す「近接性」
  5. 紛争や戦争などの「対立性」
  6. 一次的な社会での拡がりを示す「流行性」
  7. ジャーナリスト個人の価値観による「必要性」

 などがある9。ニュース価値が高い場合、記事数が増加すると共に、内容も詳細になる。またより一層の情報源の開示と実名報道が求められる。

 為政者による汚職や犯罪がからんだBCCI事件とパナマ文書事件、そしてオリンピックという世界最高峰のスポーツ大会招致疑惑はいずれもインパクト性と著名性という点でニュース価値が高かったと考えられよう。

 また、

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筆者

小田光康

小田光康(おだ・みつやす) 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

1964年、東京生まれ。米ジョージア州立大学経営大学院修士課程修了、東京大学大学院人文社会系研究科社会情報学専攻修士課程修了、同大学院教育学研究科博士課程満期退学。専門はジャーナリズム教育論・メディア経営論、社会疫学。米Deloitte & Touche、米Bloomberg News、ライブドアPJニュースなどを経て現職。五輪専門メディアATR記者、東京農工大学国際家畜感染症センター参与研究員などを兼任。日本国内の会計不正事件の英文連載記事”Tainted Ledgers”で米New York州公認会計士協会賞とSilurian協会賞を受賞。著書に『スポーツ・ジャーナリストの仕事』(出版文化社)、『パブリック・ジャーナリスト宣言。』(朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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