リハビリは「自分らしく生きる」への道
2022年12月23日
腺がんと神経内分泌がんとの混合という「ややこしい前立腺がん」で昨年夏に「余命3カ月から半年」と宣告されたジャーナリスト、隈元信一さんの闘病記、今回は「リハビリ編」です。地域の医療・介護に携わる人たちに支えられながら、「目標とする生活」に向かう歩みをつづります。
がんになって以来、私はたくさんの方々のお世話になった。
とりわけ、この人に頭が上がらない。週に1回、リハビリテーション(以下、リハビリ)の指導に来てくれる理学療法士の古田雄一さん(仮名)。1984年生まれで、「運動機能回復のスペシャリスト」である理学療法士になって15年だが、その指導には熟練の味がある。
昨年(2021年)11月29日、介護施設を出て自宅に戻ったとき、私はほとんど歩くことができなかった。
それが1年経った今は、車椅子を卒業し、電車で1時間くらいかかる大学などにも歩行器を使って通っている。自宅では歩行器や杖を使わず、自力でベッドからトイレや浴室まで歩いて行く。調子が良い日は、隣のスーパーまでも杖、あるいは杖なしで歩いて行く。
ここまで回復したのは、ひとえに古田さんのおかげなのである。
連載のこれまで
①病は不意打ちでやってきた
②激痛に耐えながら受けた余命宣告
③「がんばれ」は「がんを張り倒せ」だ
④「普通」ではないがん、治療の選択肢は少なく
⑤コロナ禍、家族が消えた病院は
⑥病院を離れ、介護施設、そして自宅へ
在宅ケアの中で、リハビリの位置づけはどうなっているのだろうか。
在宅ケアの全体を見るケアマネージャーが作る「サービス計画書」には、理学療法士が担うサービスが載っている。
例えば長期目標が「自力で地方へ取材や撮影に行ける」で、短期目標が「体調の管理ができて大学の講義や執筆活動ができる」の項目には、サービス内容として「筋力訓練などリハビリ、屋外歩行訓練」とある。
これに従って、古田さんは週に1回、我が家に来てくれる。
同じ日の午前中に来てくれる訪問看護師は古田さんと同じ会社で、その問診などの情報はタブレット端末に届いているのだが、あらためて脈拍、血中酸素濃度、血圧などを測定。その時々の体調を見ながらストレッチや歩行訓練をしてくれる。この段取りは最初からずっと変わっていない。
昨年12月7日、初めて我が家に来てくれたとき、古田さんはこう言った。
「これは、歩けますね」
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