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AIロボットが「ワンオペ育児」をなくす?~孤立した母親を救う「チカロ」の挑戦

遠隔協同の子育てネコ型ロボットの可能性と課題

山本章子 琉球大学准教授

 いまや日本だけではなく、世界中で知られているドラえもん。未来からやってきたネコ型ロボットが、出来の悪い小学生の野比のび太のお世話をする、マンガのキャラクターだ。みなさんもマンガやアニメを見ながら、一度は「どこでもドアがほしい」などと思ったことがおありだろう。

 そのネコ型ロボットが、21世紀に入って実現した。名前はChiCaRo(Child Care Robot、チカロ)。

 ドラえもんを連想させるだるまのような体型に、ピンと立ったネコの耳がついた、ピンク色のずんぐりボディ。手足はない。人工知能が搭載された、遠隔協同の子育てロボットだ。ちなみに、クマの耳がついたタイプもある。

拡大赤ちゃんと遊ぶChiCaRo(Child Care Robot、チカロ)=2022年9月23日、浦添市、著者撮影

コロナ禍で深刻化した「孤育て」

 乳幼児を育てる親がすべきことは、毎日信じられないほど多い。数時間おきの授乳や離乳食の用意、おむつ替え、あやして遊んで寝かしつけ、散歩。沐浴(もくよく)の合間に、子供が清潔に過ごせるよう大量の汚れ物の洗濯をして、家の中の片づけや掃除もやらなければいけない。冬となれば、暖房や加湿にも気を配る必要がある。

 コロナ禍で2021年度の東京都内の保育所の入所者数は前年より減少し、特に0歳児クラスの空きが増えた。在宅勤務が広がったせいか、延長保育の利用者も減ったという。

 しかし入所控えは、子育て家庭の約8割が核家族で、地域の関係も希薄になっている現代の日本において、親子が一日中家で過ごす「孤」育てにつながりやすい。しかもコロナ禍で、祖父母の助けを借りることが難しかったり、支援センターの利用が制限されたりする状況が、ここ数年続いている。

 母親一人のいわゆる「ワンオペ育児」では、家事の最中に子供が泣いたり、抱っこや遊び相手を求めてきたりすると何もできなくなる。家事どころかトイレ、食事、睡眠、風呂など自分のこともままならない。家事も子供の要求に応えることもうまくできない日が続くと、子供に対して不適切な行動に出てしまうこともある。

 ChiCaRoはそうした厳しい子育て環境で孤立する母親を救うために開発された。開発じたいは2014年だが、2020年から続くコロナ禍でニーズが一気に増している。

 開発者の一人は、自身も幼い2人の子供二人を育てる電気通信大学人工知能先端研究センター・特任助教の阿部香澄氏。その企画・製造・販売を手がける大学発ベンチャー・株式会社ChiCaRoの代表取締役社長は、生後半年弱の子供を育てている奥温子氏だ。

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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