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AIロボットが「ワンオペ育児」をなくす?~孤立した母親を救う「チカロ」の挑戦

遠隔協同の子育てネコ型ロボットの可能性と課題

山本章子 琉球大学准教授

仕事と育児の両立は可能になったが……

 奥氏と私は沖縄の産後ケア施設で知り合った。株式会社ChiCaRoの本社は東京にあるのに、その社長がなぜ沖縄に住んでいるのか?

 聞いてみると、妊娠を機に子育てしながら仕事をしやすい環境をつくりたいと考えた末、地元に戻ってきたという。コロナ禍で在宅勤務やオンライン会議が中心となったことが、沖縄に住みながら東京のスタッフに指示を出す勤務形態を可能にした。

 ただ、奥氏の弟妹がまだ小さく、両親は自身の育児で精一杯。沖縄で仕事を見つけて一緒に引っ越してきた夫と2人で、育児にいそしむ毎日だ。

 在宅勤務やオンライン会議の導入は、私にとっても仕事と育児の両立のハードルを多少は低いものにしている。

 職場に復帰し、子供を保育所に通わせるようになっても、慣らし保育期間には短時間しか預けられない。慣らし保育期間を育休の延長期間とし、5月からの復帰などを認める職場もあるが、4月から授業が始まる大学で、職員はともかく教員にはそのような柔軟な措置が認められない。午前中に帰ってきた子供を抱いて、オンライン講義を行ったり、オンライン会議に参加したりしたものだ。

 いまでも、子供が体調不良で保育所を休んだり早退したりしたときには、そうせざるをえない。文科省の指導で一科目を最低15回講義することが義務づけられており、休講にすると補講を行わないといけない。夫婦ともに県外出身で、体調の悪い子供を急に預ける相手がいないわが家では、体調の悪い子供を自宅で休ませながら行えるオンライン講義は、いわば生命線だ。

 ただし、これは子供が長時間抱っこされていてくれる0~1歳の間だけの話である。じっとしていられず活発に動き回るようになると、親が画面の前でじっとしているのは不可能だ。

 しかし、ChiCaRoがあれば、話は変わってくる。

拡大DONOT6_STUDIO/shutterstock.com

母親の心の叫びに応えてくれる

 ChiCaRoは、お座りができるようになった0歳児から長時間の一人遊びが難しい3歳児までを想定した、遠隔協同の子育てロボットだ。ロボットと言うと、ソニーのペットロボットaiboや、ヤマダ電機の店舗で使われている対話可能な自律移動型ロボットNAVii、ファミリーレストラン・ガストのネコ型配膳ロボットBellaBotなどを思い浮かべる人は少なくないだろう。そうしたロボットとChiCaRoはどう違うのか。

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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