2022年12月22日
イタリア・トリノで開催された2022年グランプリファイナル最終日、女子フリーは驚きの結果が待っていた。三原舞依が初優勝を果たしたのは、それほどサプライズではない。予想外だったのは、今年の世界選手権女王、坂本花織が表彰台を逃したことである。
坂本は現地に入ってから公式練習ではジャンプミスが目立っていたが、それでもショート・プログラム(SP)はノーミスで滑り切って1位に立った。
だがフリーの本番前の6分間ウォームアップは、ジャンプが不調で転倒を繰り返した。そこは修羅場を乗り越えてきた世界女王。本番では、気合で立て直してくるに違いない。
そんな予想は、打ち砕かれた。
6人のうち最終滑走だった坂本は、冒頭をいつも通り大きな2アクセルから始めた。だが次の3ルッツの着氷が乱れ、後半のフリップが2回転に、最後のループが1回転になるという彼女らしくない演技だった。フリー6位、総合5位。
予想外の展開に、裏のグリーンルーム(控室)のソファーでモニターを通して見守っていた三原舞依、イザボー・レヴィット(アメリカ)らも、表情を硬くして凍り付いた。
数分後、テレビインタビューに答えるために坂本がミックスゾーンの近くを通過すると、顔なじみの記者たちの心配そうな視線に「ニコリ」とけなげな笑顔で応えた。
インタビューを終えて記者たちの前に現れた坂本は、ミックスゾーンでこう語り始めた。
「この結果を受け止めるしかないし、もうこれは半分目に見えていた結果なので……全体的に全然なんか身体が追い付いていなかったというか、その自分の行きたい方向に行けなかったのが原因で、それも練習からどうにかしてたらたぶん修正できていたんですけど。足が地についてないなというのを、ずっと4分間思っていました」
そう言って、唇を噛んだ。
「ショートも僅差だったので、一つのミスも許されない状況の中でこれだけミスしてしまったのは、本当に気持ちの弱さが出たなあっていうふうに思うし、これじゃだめだなって思いました。どうしても結果を狙ってしまうと、だめになることが多いので、なんか自分と戦っていないときほどやっぱり悪い。もうちょっと自分に集中できていたらいいかなと思います」
ベテラン選手らしく、自分を冷静に分析した言葉だった。だがこの日、ホテルに帰って号泣したのだという。
翌日の、一夜明け囲み取材に現れた坂本は、すっきりした表情をしていた。
「もう思う存分泣いて。ホテルに帰ってからもう」と苦笑い。
「だいぶ切り替えられるタイプなので。あんまり引きずりたくない。引きずったとしても何も得がないので、もう今涙を出る分だけ出して。もう泣きつかれて寝ました」
これほど悔しい思いをしたのは、6位に終わった2019年全日本選手権以来のことだったという。年末に大阪での全日本を控えているが、どう立て直していくのか。そう聞いたら、返ってきたのはこれから毎日1時間走る、という答えだった。
「もうこれであと半年とか言われたら絶対無理なんですけど、もう2週間だったら絶対できると思って。やっぱり心肺機能とか鍛えるのって、走るのが一番なんで」
どのくらいの距離を走るのか。
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