田中駿介(たなかしゅんすけ) 東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻
1997年、北海道旭川市生まれ。かつて「土人部落」と呼ばれた地で中学時代を過ごし、社会問題に目覚める。高校時代、政治について考える勉強合宿を企画。専攻は政治学。慶大「小泉信三賞」、中央公論論文賞・優秀賞を受賞。twitter: @tanakashunsuk
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
日本を「世界第3位の軍事大国」にしてはならない
いわゆる敵基地攻撃能力の保有や、防衛費の大幅増を明記した安保3文書が閣議決定された。岸田首相は「防衛費倍増」を掲げ、そのための増税を行う方針だという。岸田首相自身、これは「戦後民主主義の大転換」だと称している。そもそも「敵基地攻撃能力」は憲法違反にあたり、それほど重大な決定なのであれば、なぜ国会の議論を尽くさぬまま閣議決定のみで決断を下すのか。民主主義を破壊する暴挙に他ならない。
そもそも交戦権の否定を掲げる平和憲法を保有する日本が、他国を「敵国」とみなすこと自体、異様である。ただし危険なイメージの払拭を志してか、政府は「反撃能力」との言い換えを図ろうとしている。これに抗するため、本稿ではあえて「敵基地攻撃能力」という呼称を用いる。
政府はこれまで、「敵基地攻撃能力」の保持に関して「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは、憲法の趣旨とするところではない」(1959年3月19日、衆院内閣委、伊能繁次郎防衛庁長官=当時)との見解を示してきた。多くの反対の声を踏みにじり、集団的自衛権の行使を容認する「安保関連法」の採決を強行した安倍元首相ですら、「敵基地攻撃能力」は、憲法違反であるという答弁をしている。