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「敵基地攻撃能力」「防衛費増額」に私が反対する三つの理由

日本を「世界第3位の軍事大国」にしてはならない

田中駿介 東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻

 いわゆる敵基地攻撃能力の保有や、防衛費の大幅増を明記した安保3文書が閣議決定された。岸田首相は「防衛費倍増」を掲げ、そのための増税を行う方針だという。岸田首相自身、これは「戦後民主主義の大転換」だと称している。そもそも「敵基地攻撃能力」は憲法違反にあたり、それほど重大な決定なのであれば、なぜ国会の議論を尽くさぬまま閣議決定のみで決断を下すのか。民主主義を破壊する暴挙に他ならない。

 そもそも交戦権の否定を掲げる平和憲法を保有する日本が、他国を「敵国」とみなすこと自体、異様である。ただし危険なイメージの払拭を志してか、政府は「反撃能力」との言い換えを図ろうとしている。これに抗するため、本稿ではあえて「敵基地攻撃能力」という呼称を用いる。

訓練で地対艦ミサイルの発射装置を展開する陸自隊員=2022年2月8日、沖縄県宮古島市、藤脇正真撮影 訓練で地対艦ミサイルの発射装置を展開する陸自隊員=2022年2月、沖縄県宮古島市

【理由その1】敵基地攻撃は憲法違反そのものだ

 政府はこれまで、「敵基地攻撃能力」の保持に関して「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは、憲法の趣旨とするところではない」(1959年3月19日、衆院内閣委、伊能繁次郎防衛庁長官=当時)との見解を示してきた。多くの反対の声を踏みにじり、集団的自衛権の行使を容認する「安保関連法」の採決を強行した安倍元首相ですら、「敵基地攻撃能力」は、憲法違反であるという答弁をしている。

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