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問題が多すぎる。入管法改正案の再提出

難民条約の責任を果たすのが先だ

児玉晃一 弁護士

条約違反の「2021年入管法案」

 政府は2023年1月23日に始まる通常国会に、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の改正案を再提出するようです。

 朝日新聞の報道(2023年1月12日)によれば、2021年5月に廃案になった法案(以下「2021年入管法案」といいます)の骨格を維持するとのことです。政府は22年12月22日に「『世界一安全な日本』総合戦略2022」(犯罪対策閣僚会議)を閣議決定しています。そこでは「送還忌避者の送還の促進」というタイトルの下で、「入管法の改正を行い、難民認定申請中であっても、重大犯罪者やテロリスト、複数回申請者については、一定の条件下において送還を可能とする等の措置を講じる」とされています(60頁)。

 現行法では、難民申請手続き中の者については、強制送還することができません(入管法61条の2の9第3項)。これを「送還停止効」といいます。ところが、2021年入管法案には、以下のような例外を設ける条項が盛り込まれていました。

①3回目以降の難民申請者、ただし、相当の資料を提出した者は除く(2021年入管法案同法案61条の2の9第4項1号)

②3年以上の実刑を日本で受けた者やテロリズムや暴力主義的破壊活動等に関与する疑いがあると認められた者(同2号)については、手続中であっても強制送還可能 

 再提出される法案の詳しい内容はまだ明かではありませんが、こうしたことからも、難民申請者の送還停止効の例外規定が盛り込まれていることは確実だと思われます。

 しかし、これらの条項は難民条約に反します。

 改めて、入管法改正案の再提出に強く反対します。

拡大入管施設収容中に亡くなったスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんの妹二人は入管法改正案の再提出方針に抗議して会見をした=2023年1月12日、国会内


筆者

児玉晃一

児玉晃一(こだま・こういち) 弁護士

1966年生まれ。早稲田大学卒業。1994年弁護士登録。2009年からマイルストーン総合法律事務所(渋谷区代々木上原所在)代表弁護士。1995年から入管収容問題、難民問題に取り組む。移民政策学会元共同代表、元事務局長。2014年からは”全件収容主義と闘う弁護士の会 「ハマースミスの誓い」”代表。2021年春の通常国会衆議院法務委員会では改定入管法に反対の立場で参考人として意見を述べた。著書・論文に『難民判例集』(2004年 現代人文社)、『「全件収容主義」は誤りである』(2009年 『移民政策研究』創刊号)、「恣意的拘禁と入管収容」(法学セミナー 2020年2月号 2020 日本評論社)などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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