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【67】新型コロナ「平時への移行」は貧困層の切り捨てに向かうのか

物価高騰下でのワクチン接種、検査・診療の有料化は許されない

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

コロナ5類引き下げに前のめりの政権

 岸田政権が「平時への移行」に躍起になっている。

 岸田文雄首相は1月4日の年頭記者会見で、「第8波を乗り越え、今年こそ平時の日本を取り戻してまいります」と表明。20日には新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、今春から季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げると表明した。

 「5類」に移行すれば、感染者や濃厚接触者の自宅療養や待機を要請する法的根拠はなくなり、ホテルを活用した宿泊療養の仕組みもなくなる見込みだ。

 第8波により救急医療が逼迫し、コロナ感染による死者数が過去最多を記録する最中に発表された政府の緩和策に、医療関係者からは「さらなる感染拡大と死者数の増加につながりかねない」と困惑の声が上がっている。

「平時」とはほど遠い状況であるのに

 総務省消防庁のまとめによると、1月9日から15日までの1週間に救急患者の受け入れ先がすぐに決まらない「搬送が困難な事例」は全国で8161件と過去最多を記録した。過去最多の更新は4週連続である。

「平時」とはほど遠い状況であるにもかかわらず、対策だけ「平時」に戻そうとすれば、社会の混乱は避けられない。その影響は医療現場だけではなく、私が関わる生活困窮者支援活動の現場にも降りかかろうとしている。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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