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在NY、新型コロナ感染体験記──「軽症」だったが初めて死を意識した

新治療薬パキロピッドを飲んで……

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 強い感染力を持つオミクロン変異株XBB.1.5の拡大が世界中で懸念されている中、筆者の在住するニューヨークでも再度感染が広がっている。2022年末にはパンデミック3年目にして、筆者もついに感染した。実際のコロナ感染体験は、人から聞くのと自分がかかるのでは大違いだった。まだこれから寒さも続く中で、少しでも何かの参考になればと、この体験をまとめてみた。

 イタリア・トリノの出張から帰ってきた数日後のこと、それは喉の違和感から始まった。ずっとマスクをしていたが、もしかして帰りの機内でやられたのだろうか。朝起きると喉がイガイガ、痒いような痛いような感触がある。普段は亜鉛とミントの入った喉スプレーを噴射しておくと、すぐに症状は解消される。だがこの日は違っていた。

 自宅にあった簡易コロナ検査を試すと、陰性だった。だが安堵する間もなく、全身が熱っぽくなってきて、測ると37.8度ある。

 翌朝マスクを二重にして地下鉄に乗り、マンハッタンの各所に仮設されている新型コロナ検査場に赴いてPCR検査を受けた。海外旅行をするのに陰性証明書が必要だった当時は、これらの検査場はどこも長蛇の列だった。その必要がなくなってから市内の検査場の数は半分以下になったが、自宅簡易テストが普及したためか現在はどこもほとんど待つことなく検査を受けることができる。そして医療保険証を提示すれば、PCR、抗体検査などは無料である。

ニューヨーク中心部の検査場は、すぐに結果が出る「ラピッドテスト」が受けられなくなり、訪れる人も少なくなっている=5日2022年1月拡大ニューヨーク中心部にある新型コロナの検査場

 きっかり24時間後の次の日の朝、メールで検査結果が届いた。“Virus detected. Positive.”という単語が目に飛び込んできた。陽性。ついに人生初めて、コロナに感染してしまったのである。クリスマスを控えた12月20日のことだった。

 まず友人たちに連絡して、その週に詰まっていた予定を全てキャンセルする。一人で孤独なホリデイを迎えることになった。


筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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