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コロナの副産物として生まれた障害者への合理的配慮とは?

地球の未来への希望的観測 Z世代の危機感と宇宙の可能性

恩田聖敬 株式会社まんまる笑店 代表取締役社長

 35歳でJリーグFC岐阜の社長を務めるなど、恵まれた人生を送ってきた恩田聖敬さんは、ALSを発症したことによって視野や価値観や人生観が途方もなくひろがったといいます。恩田さんの連載「健常者+ALS患者の視座から社会を見たら」の最終回です。
 さまざまな体験を共有する場となることが、論座のシンカ(進化や深化)のひとつの方向性ではないかと考えています。読者のみなさまも、お互いの体験を共有しながら、ともに論じあいませんか。ご感想やご要望がありましたら、info-ronza@asahi.com までメールをお送りください。お待ちしています。

 私は今年45歳になります。世代的に言えば団塊ジュニア世代でバブル景気の恩恵もまるでなく、就職氷河期から経済成長しない失われた30年の世の中を生きてきた人間です。それが今になってSDGsや地球温暖化や戦争、少子高齢化問題です。我々はなんの恩恵も受けていないのにあらゆる地球規模の危機に向き合わざるを得ない状況には、なんとも理不尽を感じます。

 しかしながら我々の下の世代、いわゆる「Z世代」は積極的に社会問題に取り組んでいます。デジタルネイティブ世代、生まれた時からスマホやSNSが存在した人たちは行動原理から違うのだと思います。おそらく世界とつながっている感覚がはじめからインストールされているのだと思います。

コロナ禍前に行ったZ世代との交流会。写真中央の車いすが筆者=筆者提供

 日本においてはZ世代は少数派ですが、地球規模で見ればインドやアフリカでは人口が増え続けており、むしろZ世代の声は益々大きくなります。そこに我々障害者が多様性という言葉で社会に受け入れられる可能性が出てくると思います。そのためには我々日本人も地球人として世界の問題を考える必要があります。

 加えてZ世代はコロナ危機を経験しています。これも人々の生活を激変させました。しかしそこでもデジタルが力を発揮しました。私事ですが、弊社まんまる笑店で請け負った講演が軒並み無期限延期になって、私は社会との関わりを絶たれたと本当に落ち込みました。けれども何の因果かコロナが障害者の社会進出を後押ししました。代表例がテレワークです。

 障害者は自宅に居ながら仕事や会議に参加出来るのが当たり前になりました。しかしそもそも論で、私のような重度障害者は外出するだけでとても大変です。ヘルパーさんが複数人必要ですし、万が一のリスクを想定すると常に荷物はスーツケースになります。よってテレワークは障害者の求める社会参画方法だったはずです。しかしながらコロナ前は障害者に対するそのような合理的配慮はなかったように思います。

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