強力なライバルが現れた札幌五輪誘致、ロシア選手の国際大会復帰にも迫られる対応
2023年02月24日
14日、JOC(日本オリンピック委員会)・山下泰裕会長(65)の定例会見が行われた。年明けからわずかな期間で、今後のオリンピックの行方や、日本のスポーツ界の立ち位置をも根本的に問われるニュースが相次いでいるからか、記者たちの質問にはどれも、緊迫感が漂っていたように感じられた。
2月8日、東京五輪・パラリンピックのテストイベントを発端とする談合事件で、大会組織委員会運営局の元次長・森泰夫容疑者(55)や、電通スポーツ局長ら4人が独占禁止法違反の容疑で東京地検特捜部に逮捕された。すでに、組織委員会の元理事、高橋治之被告やKADOKAWA、AOKIといった大会スポンサーの幹部ら15人が受託収賄罪や贈賄罪で起訴されており、森・元局長らの談合事件によって、個人の汚職から、組織ぐるみの犯罪へ、大会の根幹に捜査が及ぶ構図にステージが変わったといえる。
山下会長はこの問題に対し、「スポーツ、五輪へのイメージが失墜し、傷ついたのは事実。非常に厳粛に受け止めている」と答え、まずは、スポーツ界、オリンピックに対する市民の信頼回復に努めるとした。加えて、理事会の形骸化ほかを反省点としたうえで、スポーツ庁と共に取り組む「大規模な国際又は国内大会の組織委員会等のガバナンス体制等の在り方検討プロジェクトチーム(PT)」の新たな指針作りに注力する方針を示した。
同PTでは2月10日に、11項目の「原則」を骨子とする指針案が公表された。
11の骨子には、「コンプライアンス委員会の設置」と、「コンプライアンス強化のための教育を実施すべき」といった基本的なガバナンスの構築が提案されているほか、「利益相反を適切に管理すべき」と、スポンサーなどとの契約を締結する以前に、利益相反や契約の経緯についてチェックができる仕組みづくりを提言する。
また、「通報制度を設ける」との提案もされた。国際大会の組織委員会の構成は、関連会社からの出向者が多勢を占める独特なもので、出向元の業種、立場もさまざまだ。このためコンプライアンスや透明性に対する「企業風土」が大きく異なり、この独特の形態が、組織内での自浄作用を欠き、不正を助長させた一因とも考えられるからだ。
組織委員会の体制強化をはかり、2030年の冬季五輪・札幌招致の再起につなげる計画の一方、国内で開催される国際競技会には、来年のパリ五輪の出場権をかけた重要な大会があり、札幌招致以前に、実行性のあるガバナンス策定を急がなくてはならない時でもある。
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