「侍ジャパン」が世界一! WBCが野球の普及に果たす役割と日本優勝の意義
「野球のワールドカップ」として成長。低下する日本の野球人気の復活につながるか?
鈴村裕輔 名城大学外国語学部准教授
今回で5回目となった「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」は、日本代表が22日、米国代表に3対2で勝って3大会ぶり3度目の優勝を飾った。

WBC決勝で優勝を決め喜ぶ日本代表の選手たち= 2023年3月21日、 米フロリダ州マイアミ
「史上最強」という前評判通りの活躍
日本代表は1次リーグを全勝で通過、準々決勝のイタリア戦は危なげなく勝ち、メキシコとの準決勝は9回裏に村上宗隆選手(東京ヤクルトスワローズ)の適時打で逆転勝利して6連勝で決勝戦に進出。まさに「史上最強」という前評判通りの強さを見せた。
そして迎えた最終試合。大会史上初めて日米両国が“激突”した決勝戦は、先制点を許した直後に逆転。その後は日本らしい細かな継投で強力な米国打線の反撃を封じた。歴史的な組み合わせとなった一戦は、これからも長く語り継がれる、大会史に刻み込まれる名勝負だったと言っていい。
日本勝利の余韻がさめやらぬなか、本稿ではWBCの歴史的な意味と、今回の大会から見えてきた意義について、考えてみたい。
チェコ代表が実証したWBCの効果

試合後、日本代表に向かって拍手し、健闘をたたえ合うチェコ代表の選手たち=2023年3月11日、東京ドーム
今大会で大きな注目を集めたチームの一つに、3回目の挑戦で初めて本選に出場したチェコ代表がある。
チェコで野球が行われるようになったのは約30年前。1989年のベルリンの壁崩壊に象徴される冷戦終結を契機として本格的に行われるようになり、93年にはアマチュアリーグのチェコ・エクストラリーガが創設されるなど組織が整えられた。97年には旧チェコスロヴァキア出身のパベル・ブディスキーがモントリオール・エクスポズ(現在のワシントン・ナショナルズ)とマイナー契約を結び、チェコ人として初めて北米プロ球界の一員となっている。
チェコではサッカーの人気が高く、アイスホッケーも盛んで、野球の競技人口は約7000人と規模は小さい。しかし、国内リーグの地道な活動を目にした若者が野球に興味を持ち、大リーグで学んだ指導者たちが体系的な指導を行って、WBCはチェコ野球が目指すべき最大の目標となっている。
消防士や教員が代表となり、「本業と野球の二刀流」が話題となったチェコ代表だが、1次リーグでは中国代表に勝利するなど、実力は確実に向上している。
WBCを選手会とともに主催する大リーグ機構は、「WBCは野球の普及のために不可欠」と主張してきた。しばしば懐疑的な視線を向けられてきた機構のこの主張が、決して偽りではなかったことを、今回のチェコ代表の活躍が実証したと言えるだろう。プロリーグを持たない、あるいはリーグはあっても発展途上にある国や地域にとって、WBCは選手たちが野球を続ける大きな動機となっている。
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