脇阪紀行
2010年06月29日
合意への期待はあえなく裏切られた。モロッコで開かれた国際捕鯨委員会(IWC、加盟88カ国)の年次総会は、さしたる成果を出せないまま閉幕した。
焦点はマキエラ議長の提案だった。調査捕鯨や商業捕鯨という区別をなくし、鯨種や海域ごとに捕獲数の上限を決めて一括管理する。この案を土台にぎりぎりの交渉が行われたが、出てきた結論は「一年間、頭を冷やしてまた考えよう」だった。
交渉決裂の責任は誰だったのか。それを論じても、捕鯨国と反捕鯨国の対立の火にさらに油を注ぐだけだろう。ただ、交渉で最も強硬な姿勢を取り続けたのがオーストラリアであることは確かだ。
その反対姿勢は際立っていた。ギャレット環境相は「科学の名の下にクジラを殺すのは止めろ」と日本の調査捕鯨を批判した。交渉が物別れに終わった後には「妥協できなかったことはIWCにも良かった」と平然と語っている。
「豪政権が崩壊」とのニュースが世界を駆け巡ったのはその直後のことだった。ラッド首相が党内抗争で引きずりおろされ、ギラード副首相が豪州史上初の女性首相になったのだ。
なぜ豪州はそこまで反捕鯨に強硬なのか。一体、豪州政治に何が起きているのか。
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